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i.club代表が語る、東大i.school流 地域イノベーションの起こし方①

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こんにちは、@h0saです。

2014年5月8日に開催された、産業技術大学院大学主催デザインミニ塾に参加しました。

テーマは「ソーシャルデザインとデザイン思考 ~社会的課題をいかにデザイン的に解決するか~」。

i.clubマネージングディレクターの小川悠氏と、ご当地ボウサイダー制作委員会コンセプター兼代表の川島勇我氏のお二人にによる講演でした。

お二人とも「デザイン思考」を取り入れた大学教育プログラムである、東大i.schoolと慶應SDMにそれぞれ在籍されており、地域とイノベーションに関する面白いお話を聴くことができました。

今回は2回に分けて、講演内容をご紹介します。

前半: i.club代表が語る、東大i.school流 地域イノベーションの起こし方①【この記事】
後半: ボウ・サイダー代表が語る、慶應SDM流 地域イノベーションの起こし方②

 

i.schoolについて

講師の小川氏はi.schoolでアシスタントディレクターをされており、はじめにi.schoolについての簡単な説明がありました。

東京大学i.schoolは2009年に設立されたイノベーション教育プログラムで、デザイン思考やスタンフォード大学d.schoolの方法論を取り入れています。

2014年度も通年性が確定し、今年から他大学の学生も受け入れるようです。

 

i.schoolの目指すもの

・マインドセット
 - みんなで未来を切り開けると感じられるようになること

・スキルセット
 - 共感からアイデアを想像するプロセスを自ら作り上げられること

・モチベーション
 - イノベーションを起こすことに挑戦したいと思うこと

 

イノベーションの起こし方

「新しいアイデア → 新しい行動・習慣・価値観」

という流れから、

新しいアイデア ← 新しい行動・習慣・価値観

へ。つまり、人々の行動や習慣、価値観を深く洞察することで新しいアイデアを得るアプローチです。i.schoolではこれを「人間中心イノベーション」と呼んでいます。

このあたりの方法論は、schooで公開されている東京大学i.school「イノベーション人材」養成カリキュラム(無料)を一通り見ると概要が掴めるかと思います。

このブログでも第一回の内容を記事にしました。

参考:東大i.schoolのイノベーション講義を聴いて「人間中心デザイン」について考え直した | UX INSPIRATION!

 

地域とイノベーション教育の可能性

いよいよ本題です。今回の講座のテーマである「地域とイノベーション」の話に移りました。

東日本大震災を機に東北でイノベーションを起こそうとしたが、失敗に終わった

小川氏は、東日本大震災後、「東北でイノベーションを起こせないだろうか?」という想いを抱き、チームを組んで東北へ行ったそうです。

しかし、未来を切り拓くためのアイデアには結びつかなかった。外部の人間が一生懸命アイデアを考えても、実現できるアイデアに結びつかなかったとのこと。

それでも後からわかったのは、若者が地元を離れてしまうという問題だそうです。

「若手が外に行ってしまう。このまちは、この先どうなるのか、心配だ」

という地元民の方のコメントに問題が象徴されています。

後日、小川氏は気仙沼に訪れたそうです。しかし、マックはない、スタバはない・・・。地元の若者も、地域に対してポジティブに思っておらず、地元を出たいという雰囲気。

さらには気仙沼は地元に大学がなく、大学に行くには地元を出ることに。それが地域の人口減少、担い手不足につながります。

しかしわかったのは、若手は地元が嫌いだから離れているわけではない、ということ。いくつかの問題が絡み合い、担い手不足につながっているとのことです。

 

若手の地元離れに根ざす3つの問題

1. 地域の良さを理解する機会がない
 - 気仙沼の名物は?知る機会がない

2. 地域の人々とつながる機会がない
 - 学校と自宅の行き来だけ 活躍している大人と交わることがない

3. 未来をつくる方法を学ぶ機会がない
 - 今の日本には未来をつくる方法を学ぶ機会がない

これらを解決するために、小川氏は以下のような行動を起こしました。

 

i.clubを立ち上げる

2012年4月、小川氏は”i.club“を立ち上げました。

i.club(=innovation club)は、運動部でも文化部でもない、新しいクラブ活動。地元の高校生たちが地元の未来を切り拓く、イノベーション・未来活動とのことです。

イノベーション教育のプロセス

イノベーション教育のプロセス

i.clubについてはi.club本サイトに詳しく説明があります。

参考:i.clubについて | iclub

 

事例:Oh!BENTO

気仙沼高校生の”気付き”

気仙沼高校生の気付き

高校生たちがフィールドワークやインタビューを行った結果、気仙沼には長期保存が効くものがたくさんあることがわかったそうです。

そこで出たアイデアの1つが、「今日明日弁当」。

今日明日弁当

今日食べる弁当だけでなく、明日食べる分の弁当もついてくるというアイデアです。

高校生とサプライヤー、観光課が打ち合わせを行った際、サプライヤーは原価や衛生面の観点から「なめているのか」と怒ったそうです。そこに観光課が「レトルトでも良いのでは、家族に持ち帰る用として」とフォローしてくれたそうです。

高校生たちは怒られてショックを受けていたそうですが、議論を起こすこと自体がとても大事だと思いました。

既存のお弁当屋さんは原価で考えて、ターゲットで考えてしまうが、これでは新しいものは作れない。2段のお弁当を提案することで議論が生まれ、そこからイノベーションが生まれる、と小川氏もコメントされました。

 

高校生の変化

・気仙沼が好きになった
・東京出ても帰って来ようと思った
・東京から何か知識を持ち帰りたいと思った

大事なのは地元とつながること。「地元で生きる」ではなく「地元と生きる」。

こうした方向性が見えたものの、地域全体を巻き込むことはできなかった、と小川氏は続けます。新しい産業が起きない限り、地元は盛り上がらない。イノベーション教育はできたが、地域イノベーションには結びつかなかった。

 

社会的課題をみんなの課題に

・地元で協力する、地域で新しいことをするのはなかなか難しい
・ライバル、好き、嫌い、新しいことに抵抗がある

といった地域の状況で、いかに社会にイノベーションを結びつけていくか。このような課題意識を持ちながら行った、「気仙沼のドライフードにイノベーションを」という3ヶ月のプロジェクト内容を紹介されました。

なまり節ラー油の誕生

・かつお節、フカヒレなど、気仙沼にはドライフード文化があった

・イタリアでいただいたごちそうの多くがドライフードだった(今日来たからといって明日届くとは限らない 信頼出来ない ナマモノは流行らないという背景)

・気仙沼には「かつおのなまり節」という半生でソフトなかつお節のような素材があり、素朴な食べ方しかなかった

・このままでは地元の食文化がなくなってしまう

これらの気付きから、高校生たちは地元の人たちにインタビューを行い、新しいドライフードを模索します。実際に手を動かしてプロトタイプをつくったそうです。

そこで生まれたアイデアが、「なまり節ラー油」。

大人が「これは面白い」となり、クラウドファンディングのREADYFOR?を利用して資金調達、150人から170万円を集めたそうです。

BRUTASや日経新聞、ニュースにも取り上げられ、日本を代表するおみやげにも選ばれたそうです。

 

なまり節ラー油が成功したポイント

・イノベーション教育
・外部からアイデアを出すのではなく
・地元の人達がいいと思うものを地元の人達がつくる

→地元の高校生が大きく変化。高校生たちが変わると、大人が変わる。大人が変わると、地域が変わる。

なまり節ラー油の一件から、常温保存の商品増えたそうです。大人が新しいことに挑戦するようになり、地域としてイノベーションへの意識が少なからず芽生えたことは大きな功績でしょう。

 

どのようにして地域イノベーションを起こすか

最後に、事例から体系化された、地域イノベーションモデルについての紹介がありました。

地域イノベーションモデル

地域イノベーションモデル

これは日本全国に通じるモデルだと信じている、と小川氏はおっしゃいました。

僕も事例を聞いて、非常に納得しました。

 

おわりに

地域とイノベーションに漠然と興味を持っていたのですが、具体的な成功事例を知り、さらに興味を深めることができました。

最後の「地域イノベーションモデル」はとても納得しました。課題となるのは、イノベーション教育やコラボレーションの方法論がまだまだ情報として入手しにくく、実践家が少ないことでしょう。

このブログでも、微力ながら引き続きイノベーションに関する情報も発信していきたいです。

 

参考文献

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  • Hiroki Hosaka

    メーカー→IoTベンチャーを経て、グローバルなデジタルプロダクト会社に在籍するUXデザイナー。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。詳細プロフィール

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