デザイン業務のスピードアップ方法について考える – 『佐藤オオキのスピード仕事術』を読んで

(2020/11/08 更新) デザインプロセス |

こんにちは、@h0saです。

400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術』という本を読みました。

僕は現在ベンチャー企業で働いていますが、やはり日々のタスクがとても多いです。
最近、いかに仕事のスピードを上げられるか、頭を悩ませています。

そんな折に見つけたのが上記の本です。

nendo代表の佐藤オオキ氏の活躍は様々なメディア媒体等をを見て注目していました。400のプロジェクトを同時に進める秘訣はあるのか?何か自分の仕事が少しでもスピードアップできるヒントはないか?と思って読んでみました。

以下、デザイン業務(広義のDESIGN)のスピードアップのヒントになりそうなところを個人的な視点でピックアップしました。

デザイン業務のスピードを上げるためのヒント

“「スピード」より重要なのは「同時処理能力」”

→「スピードアップ」というとあるタスクそのもののスピードを速くすることを考えがちですがそうではなく、「同時に処理する能力」を高めることが重要と説かれています。

確かにタスクそのもののスピードを速くすることには限界があり、行き過ぎると逆にクオリティを下げてしまうかもしれません。

ではどうすれば「同時処理能力」を高めることができるのでしょうか?

“目の前の仕事だけに集中する”

→「同時処理」と言いつつも、仕事にとりかかる時は目の前の仕事だけに集中するのが良いとのこと。

そのためには、仕事の優先順位をつけることが必要。佐藤オオキ氏は以下の3つのレベルに分類しているそうです。

  • Now – 3日以内程度のスパンでやるべきこと
  • Later – 切迫感はないが放っておくと危機的な時代を招く可能性がある仕事
  • Maybe – やってもやらなくても大丈夫だがそれをやることで長期的なメリットがありそうなこと

よく、「緊急度」と「重要度」の2軸をマトリクスにして仕事を分類する方法を目にしますが、佐藤氏の分類は「時間」のみを意識した1軸の分類となっています。

確かにこの方が軸がシンプルな分、タスクの分類をする際も素早く振り分けられそうです。

“仕事にあてられる時間のうち、3割程度をバッファとして空けておく”

→想定外の出来事に慌てないように、これぐらいの余裕を持つとのこと。

個人的にはスケジュールを引くときに結構詰め詰めに引いてしまうことがあるので、3割のバッファというのは(理想だとしても)意識しておきたい数字です。

“やりかけた仕事は必ず終わらせる”

→やりかけの仕事を増やすと脳に余計な負荷がかかってしまい、それだけ脳の処理速度が落ちてしまうとのこと。

個人的な仕事ハックとして、仕事をあえて途中のところで置いておいて帰宅し、翌日朝に集中して仕上げるというようなことをやっていました。しかしこれは1つの仕事だけ抱えている時には有効でも、多くのプロジェクトを抱えている状況では得策ではないようです。

“その時に一番やりたい仕事をして、頭の回転を速める”

→その時に一番やりたい仕事を選ぶ →気分が乗る →スピードアップ →アウトプットの質も高まる
というサイクルです。しかし、これをやるには「常に前倒しで仕事を進めておく必要がある」と佐藤氏は述べています。

仕事を前倒して時間に余裕を持ち、その時に一番やりたい仕事を選んでスピードアップし、さらに時間に余裕が生まれる・・・理想的な循環です。僕もこれを目指したい。

“情報のインプットとアウトプットの日を分ける”

→情報のインプットとアウトプットは方向性の全く異なる作業なので、交互に発生すると脳が疲れてしまうとのこと。

僕もなんとなく思い当たるフシがあったので、この記事も「アウトプットの日」にがーっと書いてみました。

“あえて無理のある目標を立てる”

→極端な締め切りを設定すると、よりスピードを上げる方法を工夫せざるを得なくなり極端な負荷がかかりますが、これを何度か経験すればその負荷もあまり重く感じなくなるとのこと。

まさに修行ですね。悟空が重力100倍の部屋でトレーニングしたり、マラソン選手が酸素の薄い山地で走ったりと似ています。佐藤氏はこれを「時間」でやっているのです。

上記は個人レベルでの話ですが、プロジェクトレベルで「やるためにはどうするか」を考えるときに軸となるのは、「お金」「人手」「時間」の3つとのこと。

  • お金がある →外注等を活用
  • 人手がある →人を集中投入
  • 時間がある →人手を減らしてコストを抑える

このような考え方を持って、400件ものプロジェクトを回しているのですね。

“間違えてもいいから、判断は早く”

→決断に時間をかけることは、間違った決断をすることよりも悪影響が大きいとのこと。

二択であれば可能性が広がる方の選択肢を選んでおいて、後で柔軟に対応する。これはまさにアジャイルの考え方ですね。

“最初にしっかり必要な情報を集めることこそスピードアップの秘訣”

→プロジェクト前の徹底的な情報収集はプロジェクトの方向性を初期から明確にするための材料になり、プロジェクトの軸が固まればその後に「ブレるリスク」を最小限に留められるとのこと。

これは僕のデザイナーとしての経験からも共感するところがあります。とにかくまずはデザイン対象の周辺(業界、競合、ステークホルダー、ユーザー等)をリサーチして情報をインプットしないと、本当に「解決すべき課題」が浮かび上がりません。

“アイデアはできるだけスピーディーに出したほうがいい”

アイデアは「思いつく」ものではなくロジカルに「考えつく」ものであり、アイデア出しにかけた時間によって答えの質が変わるわけではない、とのこと。

むしろその時間を試作→改善に充てたほうがクオリティが上がります。佐藤氏はアイデアを3日ぐらい「寝かせる(=客観的に見直す)」ことはあるそうですが、「アイデア出し自体に時間をかけない」という考え方は大企業の新規事業開発プロジェクトなどでは耳が痛い気がします。

また、佐藤氏がアイデアを出すコツとして、

  • 「近しいものは何か?」「応用できる事例はないか?」を考える
  • 「違和感」に目を向ける
  • 課題を分解して「部分解」を出すことに徹する

といったことも挙げれらています。

おわりに

佐藤オオキ氏のスピード仕事術で共通する考えは、本でも述べらている表現ですが「脳を甘やかす」ことに尽きるかと思いました。

ただ、この「脳に甘やかす=負担をかけない」は裏返すと「脳をいざ使うときはフル稼働させる」ことであり、デザインに限らずプロとしてスピーディーに仕事を行うには自分の脳と器用に付き合っていかないといけないと感じました。

参考書籍

400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術

Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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