Webディレクターって実際どんな仕事? “Webディレクターズマニュアル”中村健太氏の講演会を聴いてきた

(2013/12/01 更新) Webデザイン |

先日、「Webディレクターがやるべき情報設計・実践ワークフロー」という講演会を聴いてきました。

僕はメーカーでデジタル機器のUIをデザインしていますが、Webの世界にはあまり詳しくないので、視野を広げるためです。

講師は中村健太氏。「Webディレクターズマニュアル」というサイトを運営されている方です。

実践的な業務内容を聞くことができたのでご紹介します。

 

Webディレクターって何する人?

プログラムとビジュアルデザイン以外全部」とのこと。

なるほど、”Director”なだけに、業務範囲はかなり広いんですね。

ワークフロー

【要件定義】・・・依頼者がWebで何をしたいか?を聞いて

【情報設計】・・・実際それをカタチにするならどうするか?を決めて

【仕様定義】・・・具体的な形にするために必要なものを揃え

【工程管理】・・・それを「作ってもらう」

【運用】・・・完成したものを管理し、育てていくための方針を決める (※Webはリリースしてからの方が大事だったりする)

ザックリ言うと

何をしたいか聞いて、どうやるか企画して、実際作る

これはWeb以外の分野にも当てはまりますね。広告業界のアートディレクターとか。アウトプットがWebなだけ。

 

情報設計の概要

情報設計と仕様設計

・情報設計 = 「サイトに何を載せるか」を決めること

・仕様設計 = 設計して決まったネタを「どうやってカタチにするか」を決めること

・仕様設計で考えること:施策要件、政策要件、機能要件、手続き要件、技術要件、コスト要件

・仕様設計を先にやってしまうと、他と似たようなサイトになってしまう。情報設計を先にやるべき。(HowではなくWhatを先に考える

→デザイナーなら当たり前に持っている考え方だと思いました。

 

情報設計でやるべきコンテンツの精査方法

いろいろ載せたくなるコンテンツを、どう選ぶか。基準となるのは以下の2つの指標。

KGI: Key Goal Indicator ←経営視点 最終的な利益目標(数値)

KPI: Key Performance Indicator ←開発視点 KGIを達成するための数値目標

KPIは聞いたことがありましたが、KGIは初めて聞きました。まずはKGIありきで、その次にKPI。

(さらにKGIの前には、「Vision」がある気がします。数値には変換できませんが。)

<ECサイトでの例>

KGI: サービスの成長、売上の継続的増大

KPI: 商品点数の増加率、商品詳細ページのPV数、商品購入のCVR

※CVR = コンバージョンレート。ウェブサイトへのアクセス数(=ページビュー)、またはユニークユーザーのうち、何割がコンバージョン(商品購入や資料請求などの、ウェブサイト上から獲得できる最終成果)に至るかの割合を示す指標。

・KPIはユーザーの行動(心理・実態)がないとどうにもならない指標

・情報設計とはつまり、KPI達成のために「どんな情報をユーザーに提供するか?」を設計すること

上記の考え方は、デジタル機器でのUIデザインにも通じるところがあります。1つの画面にどんな情報を載せるか。メニュー画面にどんな項目を入れるか。

ただWebとは決定的に違うところは、ユーザーの利用状況を数値として見ることができないこと。アンケート調査やユーザーインタビューでしかお客様の声を聞くことができないのはつらいところ。

Web業界は、ユーザーの利用状況を数値情報として入手できるので、その活用方法がいろいろと模索されているのでしょう。

 

コンテンツ精査手法

ベンチマーク調査

「リーダー」「フォロワー」「チャレンジャー」「ニッチャー」

の中で、自分がどこにいてどこを狙うのか?そもそもそこにマーケットはあるのか?を考える

シーズ&ニーズ調査

ユーザーが求めているものと提供できるものをすり合わせる

※ニーズ = 消費者の求めている必要性
シーズ = 提供者の持っている特別な技術や材料
ウォンツ = ユーザーの潜在的な欲求

ペルソナ定義

「基本情報」「行動特徴」「意識特徴」といった、想定ターゲットユーザーの人格や人生観を決めてコンテンツを選ぶ

 

・・・ここまではとても大事、でもこれだけで「ユーザーを動かすコンテンツ」は完成するだろうか?と中村氏は問いかけます。

否、これから必要なのは、次の「マインド設計」とのこと。

 

マインド設計

・すべてのサイト、サービスに共通していることは「ユーザーにサービスを通じて何かを感じてもらい、何かをしてもらう」こと

→サービスを通じて感じてもらうべき感情=マインド の設計が大事に

事例紹介

・Find Job! でのソーシャルリクルーティングメディアで成功(求人情報+会社紹介)

参考サイト:自己満足で何が悪い!LIGが「良いチーム」を作るためにやってきた4つの大切な事

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→ユーザーのマインドを設計し、設計したマインドを分解して、それに合わせてコンテンツを作った

・ユーザーのマインド設計とは、「○○!!」と思わせること

→「なるほど」でも「使いやすい」でも「理解しやすい」でもなく、ユーザーが驚きを持ってその感情に触れる設計が必要。(事例では「この会社応援したい!!」と思わせた)

マインドの要因分解:感情を生み出す要因を分解

 ・「応援したい!」→「ゴールへの共感」「プロセスへのアプローチへの共感」「タレント(ヒーロー)への憧れ」

・この3つの要素を取りに行くために、対象となる企業と人を分析し、インタビューの質問内容を決め、3つの要素をわかりやすく伝えるコンテンツに作り変えた

・結果として、「応援する」のクリック数増加、シェア、PV向上(以上KPI)、応募数も向上(KGI)

「感動!!!」そのものをコンテンツに

・これまでの「情報精査方式」は、これはこれで大事なことだったが、良くも悪くもユーザーは慣れてしまった

・ただ使いやすいだけでは、”次の行動”へ移りにくくなった

→ユーザーに行動してもらいたいなら「感動!!!」が必要。だから「感動!!!」そのものを設計してコンテンツ化することが重要。

 

まとめ

膨大な情報をまとめるだけではもったいない。いらない情報をカットするだけではまだ足りない。

これから必要なのは、人の感情を分解して狙った感情を「○○!!!」と呼び起こすコンテンツ!

 

所感

“Webディレクター”と呼ばれる人が、何をしているのを知ることができ、有意義な講演でした。最後の「感動!!」を設計するというお話も、大いに共感しました。デザイナーはいつも、ユーザーが感動できるUXを考えています。

ただ、Webはあるサービスを実現するツールに過ぎないと僕は思っているので、やはり僕の興味としては「サービスデザイン」「リーン・スタートアップ」「リーンUX」といったところにあることを再認識しました。

中村さん、貴重なお話ありがとうございました。

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Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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