サイレント・ニーズを探れ!Frogのデザインリサーチ手法の1つ「Wallet Mapping」が衝撃的だった

サイレント ニーズ top絵

こんにちは、@h0saです。

先日、東京ミッドタウンDESIGN HUBで開催された、『サイレント・ニーズ』出版記念:「デザインリサーチ」ワークショップ! ~ノキアからfrogまで、世界のフィールドで学んだ本当のソーシャルインパクトを生む方法~に参加してきました。

講師はJan Chipchase(ヤン・チップチェイス)氏。デザインコンサル frog のグローバル市場調査・分析部門 Global Insights の Executive Creative Director です。

今回はヤン氏の著書『サイレント・ニーズ』(原著名:『Hidden in Plain Sight』)日本語版出版記念として、frogでは珍しいワークショップ形式で講演が開催されました。

このワークショップで取り組んだアクティビティ “Wallet Mapping” がかなり印象に残りましたので、共有します。

 

デザインリサーチとは

“Wallet Mapping”を紹介する前にそもそも、「デザインリサーチ」とは何でしょうか。

Wikipedia日本語版にはまだ掲載されていませんが、Wikipedia英語版には以下のように定義されています。

Design research was originally constituted as primarily research into the process of design, developing from work in design methods, but the concept has been expanded to include research embedded within the process of design, including work concerned with the context of designing and research-based design practice.

要約すると、「デザインプロセスの中に組み込まれた調査」です。”デザインプロセス”を噛み砕いて言い換えると、デザインリサーチとは「ユーザーのことを深く理解し、潜在的な問題を発見するために行う調査」のことです。

frogはこのデザインリサーチを得意としており、ヤン氏はそのエキスパートとして50ヶ国以上でリサーチを行ってきたと言います。

20000101 Kulu 0095

20121203 Kabul 0049 2 1

※写真:『サイレント・ニーズ』出版記念:「デザインリサーチ」ワークショップ! | Peatixより引用

 

Wallet Mapping

Origin 3580748194

photo credit: NoHoDamon via photopin cc

では、frogで行われているデザインリサーチ手法の1つ、Wallet Mapping についてご紹介します。

Wallet Mapping は簡単に言うと、「リサーチ参加者に財布の中身をすべてさらけ出してもらい、中身を自分でマッピングしてもらう」という手法です。

下の写真は実際にワークショップで僕の財布の中身をさらけ出してマッピングしたものです。(個人情報ダダ漏れになるため、ぼかしをかけています)

Wallet Mapping

所感を当日のツイートで語りました。

もう少し補足して、Wallet Mapping の利点だと感じたことを3つご説明します。

 

1. 財布の中身を見せる側は、自分のストーリーを語りやすい

自分で財布の中身を見返して改めて思いましたが、財布の中身はその人の考え方や信念を如実に表しています。

僕は極力モノを持ち歩きたくないので、財布の中身も最小限に絞っています。その中で残ったカードを見てみると、自分の生活が浮き上がってきて、自分について話しやすかったです。

 

2. 財布の中身を見る側は、相手がどのような価値観を持っているかを把握しやすい

一方で財布の中身を見る側も、相手の価値観を把握しやすいです。「なぜこのカードを持っているの?」「なぜレシートが入っていないの?」といった質問をすることで、相手の生活や信念の話を引き出すことができます。

 

3. エクストリームユーザーを発見しやすい

中には、「銀行のカードを持っていない」人や、そもそも財布を持ち歩かない人もいます。このような「ちょっと変わった人=エクストリームユーザー」を見つけられると、その人から得られる洞察は多いとのことです。

 
以上から、Wallet Mappingは自分と全く生活圏の異なる人の生活をリサーチするのにとても有効な手法だと思いました。財布の中身が語ることはとても多いです。

 
この手法の注意点としては、財布の中に見せたくないものがあれば、見せなくてもよいことをリサーチ参加者へきちんと伝えることです。

frogがデザインリサーチを行う上での第一原則として、”Participants 1st” を掲げています。ユーザーの写真を撮った際も、それらを全てユーザーに見てもらい、見せたくない写真は消してもらうとのことです。

 

まとめ

・デザインリサーチとは、ユーザーのことを深く理解し、潜在的な問題を発見するために行う調査のこと。

・Wallet Mappingは、財布の中身をさらけ出してマッピングしてもらう手法。ユーザーの価値観を知るのにとても有効。

・”Participants 1st”。デザインリサーチではクライアントよりも参加者優先。

 

所感

今回のワークショップではもう1つアクティビティをやる予定でしたが、通訳が入り講義の時間が押してしまったことで、アクティビティは Wallet Mapping だけとなりました。ちょっと残念。

IDEOの手法は日本でもかなり見たり聞いたりするようになりましたが、frogの手法はまだあまり耳にしません。そういうわけで今回のワークショップは貴重な体験でした。

今後、またfrogから実践的な書籍が出るとのことで、どんどん日本に情報が入ってきそうで楽しみです。

 
参考書籍:

Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
詳細プロフィール