『ジョナサン・アイブ』を読んで印象的だったアイブ氏の名言7選
こんにちは、@h0saです。
『ジョナサン・アイブ』を読みました。
僕はもともと(大学3年ぐらいまで)インダストリアルデザイナーを目指していたこともあり、共感しながらとても興味深く読み進められました。ときにインハウスデザイナーとして最高の環境で働けるアップルのデザイナーに羨望すら覚えました。
同書についてのレビュー記事はググるとたくさん出てくるので、このブログでは同書を読んで個人的に印象に残ったアイブ氏の「名言」を7つピックアップしてご紹介します。
Contents
- 1 『ジョナサン・アイブ』氏の名言7選
- 1.1 1. 「工業デザイナーは、モノをデザインするんじゃない。その存在が生み出す意味をデザインするんだ」
- 1.2 2.「僕たちの目標は差別化じゃなくて、これから先も人に愛される製品を創ること。差別化はその結果なんだ」
- 1.3 3.「フォーカスグループはやらない。アイデアを出すのはデザイナーの仕事だから」
- 1.4 4.「デザインのはじめは製品のストーリーについて語り合う。物ではなく感情について話し合う」
- 1.5 5.「僕はアイデアの由来には尋常じゃないくらい注意しているし、すべてノートに書きとめている」
- 1.6 6.「世界をどう見るかがどんなデザイナーになるかを決めるんだ」
- 1.7 7.「デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる」
- 2 おわりに
『ジョナサン・アイブ』氏の名言7選
1. 「工業デザイナーは、モノをデザインするんじゃない。その存在が生み出す意味をデザインするんだ」
原文:「工業デザイナーは、モノをデザインするんじゃない。僕らはユーザーが対象をどう受け止めるかをデザインする。その存在、機能、可能性が生み出す意味をデザインするんだ」
「意味をデザインする」という表現が奥深いですね。モノという目に見えるものだけでなく、それがどう受け止められるか、その存在意義、といった目には見えない根本的なところからデザインをする、という強い意志が読み取れます。
このような姿勢で取り組んでいるデザイナーはたくさんいると思いますが、未だに「デザイナー=モノや見た目をデザインする人」と誤解している人がいるのは歯がゆいばかりです。デザイナー自らが誤解を解くためにこれからもどんどん発信していく必要がありますね。
2.「僕たちの目標は差別化じゃなくて、これから先も人に愛される製品を創ること。差別化はその結果なんだ」
原文:「デザインを差別化の手段だと思っている人が多すぎる。全く嫌になるよ。それは企業側の見方だ。顧客や消費者の視点じゃない。僕たちの目標は差別化じゃなくて、これから先も人に愛される製品を創ることだとわかってほしい。差別化はその結果なんだ」
こちらもものづくりの本質をついた発言です。人に愛される製品を創った結果が差別化となる。Human Centric に考えれば必然的に他と違うものが生まれる、ということですね。
差別化を目標とするデザインをするな、とアイブ氏は警鐘を鳴らしています。
3.「フォーカスグループはやらない。アイデアを出すのはデザイナーの仕事だから」
原文:「フォーカスグループはやらない。アイデアを出すのはデザイナーの仕事だから」「明日の可能性に触れる機会のない人たちに、未来のデザインについて聞くこと自体が的外れだよ」
とてもアップルらしい発言です。ユーザーに欲しいものを聞いてはいけない、というのはよく言われますが、まさにそれを究極的に実践しているのがアップルでしょう。
その分、デザイナーの創造力が試されます。iPodやiPhoneを生み出したアップルのデザインチームは個人だけでなく「組織として」高いクリエイティビティを持っているのは、アイブ氏の存在によるものであることは想像に難くありません。
4.「デザインのはじめは製品のストーリーについて語り合う。物ではなく感情について話し合う」
原文:「デザインのはじめ、目標を定めようとする段階では、製品のストーリーについて語り合う。つまり、製品をどう見るかを話し合うんだ。その製品に何を感じるか、物ではなく感情について話し合う」
これはまさにUXを起点にデザインを始める、という考え方ですね。
物ではなく感情にフォーカスすることで、アップル製品の箱を開けるときのワクワク感や、製品を操作する時の快適さ、所有すること自体の喜びといった、目に見えないエモーショナルな経験を生み出しているのでしょう。
実際に現場でストーリーをどんな風に話しているのか、気になります。
5.「僕はアイデアの由来には尋常じゃないくらい注意しているし、すべてノートに書きとめている」
原文:「僕はアイデアの由来には尋常じゃないくらい注意しているし、すべてノートに書きとめている。だから、僕のデザインをスティーブの手柄にされると傷ついてしまう」
デザインに真摯に向き合っているアイブ氏だからこそ、知的財産にも並々ならぬ敬意を払う姿勢が伺えます。
アイデアの由来を書き留めておくことは、パテント出願時やデザイナーの評価にも役立つので、見習うべき行動でしょう。
「僕のデザインをスティーブの手柄にされると傷ついてしまう」という言葉はとても人間的で親しみを覚えます。^^
6.「世界をどう見るかがどんなデザイナーになるかを決めるんだ」
原文:「世界をどう見るかがどんなデザイナーになるかを決めるんだ。なにを見ても、『どうしてなんだ、どうしてこうなってるんだ? どうしてああなっていないんだ?』と考えてしまうのが、この仕事の悩ましいところだ」
これはデザイナーとして改めてハッとさせられる言葉でした。「世界の見方がデザイナーの能力を決める」とも言い換えられます。
常にアンテナを張って、あらゆることに疑問を持ち続けること、あらゆるものから気付きを得ること、がデザイナーには求められます。
7.「デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる」
原文:「デザイナーのくせにこんなことを言うのはおかしいけれど、デザイナーがこれみよがしにしっぽを振っているような製品を目にすると、いやになるんだ。僕の目標は、シンプルなもの、持ち主が思い通りにできるものだ。デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる」
この発言から、僕はiPhoneのタッチ操作を思い浮かべました。手に吸い付いてコンピューターを操作していることを忘れる感じ。
これをインタラクション研究者の渡邊恵太氏は著書『融けるデザイン』の中で「自己帰属性」と呼んでいますが、アイブ氏はこの「自己帰属性」をデザインしていると言えるでしょう。
アイブ氏がヒューマンインタフェース部門を統括するようになったのはiOS 7以降なので、最初のiPhoneのインタラクションにどの程度口を出せていたのかはわかりませんが、アイブ氏のこの思想がアップル全体に行き渡っているのは間違いありません。
おわりに
以上、個人的に共感・感心したジョナサン・アイブ氏の言葉をご紹介しました。
さて、発売が待ち遠しいApple Watchですが、以下の記事でも書かれているように Apple Watch は「純粋にIveの作品」と言われているようです。
参考:NewYorker紙 Jonathan Iveの記事から学んだこと | MEMOPATCH
Apple Watchを手に入れたら、Watchを触りながらもう一度これらの言葉を振り返ってみたいと思います。