コンテクスチュアル・インクワイアリーのコツとツボを学ぶ ー 樽本徹也氏のインタビュー入門より

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photo credit: HckySo via photopin cc

こんにちは、@h0saです。

先日、「UX、デザイン思考、リーンスタートアップのためのインタビュー入門」に参加してきました。

講師は、『ユーザビリティエンジニアリング(第2版) ―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法―』著者の樽本徹也氏。

今回のワークショップで学んだ「コンテクスチュアル・インクワイアリー」と「インタビュー設計」についてまとめました。

 

コンテクスチュアル・インクワイアリーとは

コンテクスチュアル・インクワイアリー(Contextual Inquiry – 文脈的質問法)とは、ユーザーの現場に身を置き文脈に応じて調査を進め、行動の根底にある潜在的なニーズを明らかにする、観察とインタビューの手法です。

デザインリサーチ手法の1つで、「師匠と弟子」モデルとも呼ばれています。

 
※デザインリサーチ関連記事:サイレント・ニーズを探れ!Frogのデザインリサーチ手法の1つ「Wallet Mapping」が衝撃的だった

 

師匠と弟子モデル

1つ目の演習では、2人ずつペアになってそれぞれあるシーンの説明を読み込み、「師匠」と「弟子」に分かれてインタビューをし合いました。

ここで言う「師匠」はインタビューされる人(=ユーザー)「弟子」はインタビューする人(=リサーチャー)のことです。つまり、リサーチャーはユーザーに弟子入りして教えを乞うかのように、文脈に沿って気になるところを質問していきます。

 

質問のコツ

1. 文脈をクリック

インタビュー中、気になる事実(話の糸口)を見つけたら、その文脈をクリックして前後の話を掘り下げていきます。

ワークショップでの演習では、ある糸口の”後”の話は聞けたのですが、”前”の話は引き出せませんでした。”前後”を意識することで、さらに興味深い事実や意識を引き出しやすくなります。

話の糸口

 

2. 行動の理由を尋ねる

気になる事実に遭遇したら、その話を「掘り下げる」ことも必要です。その際、「Yes/No」で答えられる質問(クローズドクエスチョン)ではなく、「なぜ?」「どうして?」といった自由回答形式の質問(オープンクエスチョン)が有効です。(日常会話でもそうですよね。)

ユーザーは答えを知りません。意見を聞くのではなく、その行動を”なぜ”したかという理由を問うことで、潜在的な意識を引き出しやすくなります。

質問のコツ

 

インタビューを設計する

2つ目の演習では、インタビュー前に行う「インタビュー設計」のシミュレーションを行いました。

インタビュー設計の最終目標は「インタビューガイド」を作ることですが、今回はその前段階までを6人グループに分かれて付箋をペタペタしながら行いました。

 

聞きたいことをリストアップしてKJ法でまとめる

まずは聞きたいことをリストアップします。今回の演習ではすでに質問リストが用意されていたので、それを付箋に書き写し、KJ法を使ってまとめるのがメインでした。

KJ方のコツとしては、まず差し当たり3枚の付箋を壁にランダムに貼ります。

そして1枚ずつ付箋を出していき、3枚の中で近い方に貼っていきながら徐々にグルーピングしていきます。

最初の1枚から似ているものを考えるのではなく、まずは3枚適当に貼ってしまうのが大事とのことです。

グルーピング

グルーピングすることで、「何を聞きたいか」レベルの質問が「何について知りたいのか」という大きいテーマが浮かび上がります。

そして、必要に応じて質問を並び替え、インタビューガイドに落とし込みます。

インタビューガイド例:

インタビューガイド例

 

そのとおりにインタビューしない

せっかく作ったインタビューガイドですが、「絶対にそのとおりにインタビューしてはいけない」とのことです。

なぜならば、インタビュー現場は状況に応じて変わるからです。そもそも、この手法の名前は「文脈的質問法」。文脈に沿った質問をすることが重要となります。

文脈を無視してインタビューガイド通り質問するのではなく、あくまでインタビューガイドは会話のきっかけを掴むために頭の中に入れておき、必要に応じて思い出しながら状況に応じて質問をしていくのがよいでしょう。

 

おわりに

今回のワークショップで、コンテクスチュアル・インクワイアリーの概要を学ぶことができました。

ただし、コンテクスチュアル・インクワイアリーは「Contextual Design」のプロセスを構成する1ステップに過ぎません。

Research & Design Method Index -リサーチデザイン、新・100の法則』によると、「コンテクスチュアル・デザイン」ではコンテクスチュアル・インクワイアリーの後に以下のステップが続きます。

・インタープリテーション(解釈)セッション

・ワークモデルと親和図法

・ビジョン確立とストーリーボード作成

・ユーザー環境デザイン

・ペーパーモックアップ

「ワークモデルと親和図法」については、下記リンクに事例を交えた説明があります。

参考:ユーザーを本当に理解していますか? ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」 | Web担当者Forum

結局のところ、インタビューで得たインサイトをどうソリューションに落としこんでいくかが鍵となります。この辺りはまたこのブログで触れてみたい話題です。

 
以上、「コンテクスチュアル・インクワイアリー」について学んだことをまとめてみました。

 

その他参考サイト

コンテキスチュアル・インクワイアリーとは: DESIGN IT! w/LOVE

ユーザー調査 | ユーザビリティ | ミツエーリンクス

 

参考文献

Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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