『聞く力』の阿川佐和子氏から見習うべき、ユーザーインタビューにおける3つの心得

こんにちは、@h0saです。

今更ながら、阿川佐和子著『聞く力』を読みました。

きっかけは、昨年受講した「サービスデザイン方法論 インタビューと要求抽出」の回で、講師の早川氏が薦められていたからです。

同書は阿川氏の体験談をもとに数々のインタビューTipsが散りばめられています。

ただし、阿川氏のインタビューの目的はインタビュー相手(=有名人)の「魅力」を対話を通じて引き出すことであり、デザインリサーチの現場で求められる「隠れたニーズ」「本質的欲求」を引き出すユーザーインタビューとは趣旨が異なります。

そんな中でも、タイトルにある通り「聞く」という純粋なコミュニケーションにおいてのTipsには見習うべきところがありましたので、デザインリサーチの観点で心得ておくべきポイントを3つにまとめてご紹介します。

『聞く力』から見習うべき、ユーザーインタビューにおける3つの心得

1. 聞きたいポイントを絞って頭の中に入れておく

1つめのポイントは、インタビューを始める前に、聞きたいポイントをまとめて頭の中に入れておくことです。

インサイトを探るのに有効で実施も比較的簡易な半構造化インタビューでは、事前に大まかに質問の内容を決めて「インタビューシナリオ」を作成しておくことが推奨されています。話が一段落して見返すことで、次の話題のきっかけを掴むことができるからです。

一方、『聞く力』では「質問は1つ」「テーマは3つ」に絞る、と書かれています。

阿川氏がインタビューの基本としているのは、「誠意を示す」こと。そのためには相手の話に集中する必要があります。相手の気をそらすようなもの(メモなど)は持たずにインタビューに臨まれているそうです。

(前略)不信感を相手に抱かせないためにも、私はできるだけ余計なものを排除して、会話に集中することを心がけます。質問の内容はさておき、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」という態度で臨み、きちんと誠意を示すことが、まずはインタビューの基本だと思うからです。
– 『聞く力』より引用

確かに、頻繁にインタビューガイドに目をやるようでは相手の気もそれてしまい、本音が聞き出せないかもしれません。デザインリサーチでのユーザーインタビューではさすがに「質問は1つ」というわけにはいきませんが、心得としては見習うべきと思いました。

本当に聞きたいことは頭の中に叩き込んでおいて、参考までに聞きたいことはインタビューガイドに書いておくなど、質問に優先度をつけて臨むのが良さそうです。

2. 段取りに囚われ過ぎない

2つ目のポイントは「1. 聞きたいポイントを絞って頭の中に入れておく」にも関連しますが、「段取りに囚われ過ぎない」ことです。

時間や段取りに囚われすぎると本当に大事な話を掘り下げられずに聞き逃してしまう可能性があります。

そこで意識したいのが、「フックになる言葉を探す」こと。ほんの小さな言葉をきっかけに、重要なポイントを聞き出せるかもしれません。

大事なポイントは、得てして、ほんの小さな言葉の端に隠れているものです。さりげなくつけ加えた形容詞や、言葉の最後に挟み込んだ普通名詞や、ちょっとした小さな言葉。そういう謙虚な宝物を見過ごしてはいけません。
– 『聞く力』より引用

これは樽本徹也氏も『ユーザビリティエンジニアリング』の中で、「文脈をクリック」という表現で似たようなことをおっしゃっています。会話の中から面白そうなリンクを見つけ、そこをクリックしていくのです。

また、「意外性」も重要、と阿川氏はおっしゃっています。インタビュー相手のイメージから離れた話は純粋に興味深く、洞察が含まれている可能性が高まります。

いずれにしても、「このさりげない言葉は?」「これは意外!」と思ったら、それを掘り下げない手はありません。多少段取りを変更してでも、深く突っ込んで話を聞くべきでしょう。

3. 相手のテンポに合わせる

最後に3つ目のポイントは、相手のテンポを大事にすることです。これもインタビューの基本である「誠意を示す」ために必要なポイントでしょう。

阿川氏が自分のペースを押し付けて、怒鳴られてしまったエピソードが印象に残っています。

つまりは相手のペースや段取りや心構えを無視して、一方的に自分のリズムを押し付けると、人によっては喜ぶどころか、ぶしろ警戒する場合があるということです。
– 『聞く力』より引用

また、沈黙が続いた時にも、言葉を置き換えたり答えを促したりするのではなく、できるだけ待つことを心掛けているそうです。

今、お相手は、ゆっくりと考えているのだ。そのペースを崩すより、静かに控えて、新たな言葉が出てくるのを待とう。その結果、思いもがけない貴重な言葉を得たことは、今までにもたくさんありました。
– 『聞く力』より引用

個人的な経験でも、沈黙を経て出てきたお話は意外な内容が多く、インサイトが隠れていることが多い印象です。

おわりに

僕はこの1年で前職と現職合わせて30回ほどユーザーインタビューの場に立ち合いました。その光景を思い出しながら、反省も交えて『聞く力』に書かれていたユーザーインタビューに役立ちそうなポイントをまとめてみました。

1. 聞きたいポイントを絞って頭の中に入れておく

2. 段取りに囚われ過ぎない

3. 相手のテンポに合わせる

過去のインタビューでは僕はガイドを頻繁に見返しがちだったので、特に1番に気をつけながら次回のインタビューの機会に臨んでみます。

参考文献

聞く力 心をひらく35のヒント(文春新書) [ 阿川 佐和子 ]

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Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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