【東京モーターショー2017】UX視点での注目ポイント3つ

こんにちは、@h0saです。

先日、東京ビッグサイトで開催されていた東京モーターショー2017を観てきました。

このブログでは、過去2回分のモーターショーを記事としてまとめています。

東京モーターショー2015を観て感じた、クルマを取り巻くUXデザイン3つのトレンド | UX INSPIRATION!

【東京モーターショー2013レポート】UIデザイナーが感じた3つのトレンド | UX INSPIRATION! | UX INSPIRATION!

今回も、カッコイイ車だけの展示はほどほどに観て、新しい乗車体験や生活の在り方の提案をしているブースやコンセプトモデルを重点的に観てきました。

全体的にもうコネクティッドや人工知能、自動運転は当たり前で、それをどう自社らしいサービス&プロダクトとして世に出していくかを各社探っている様子が伺えました。

というわけで、UXの視点で東京モーターショー2017の注目ポイントを3つにまとめてみました。

1. クルマという存在の2極化(キャラクター/職人道具)

2. クルマを取り巻く環境・ライフスタイル提案の増加

3. フィンテック企業出展により融ける壁

 
以下、それぞれ実際の展示画像を交えて、具体的にご説明します。

1. クルマという存在の2極化(キャラクター/職人道具)

今回のモーターショーのコンセプトモデルを見て思ったことは、クルマはこのままロボットとしてキャラクター化してくか、走る道具として極められていくか、二極化していくんだろうなぁ、ということです。

キャラクター化の方向

各社こぞって、人間とコミュニケーションを取るクルマを展示していました。より身近な存在として、コンパクトでどこか人間味を感じるデザインが多いです。

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トヨタの Concept-愛iシリーズ

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ホンダの NeuV と Urban EV Concept(ホンダのブースは行きそびれてしまったので公式サイトから画像を拝借)

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引用:Honda NeuV | 出展車両 | 第45回東京モーターショー2017 | Honda

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引用:Honda Urban EV Concept | 出展車両 | 第45回東京モーターショー2017 | Honda

 
これらのようなコミュニケーション型のクルマは、車内における音声での対話はもちろん、外にいる人とも液晶や光を使って対話しようとする提案が多かったです(2年前も見ましたが…)。

このようにクルマがコミュニケーションを取るツールとして進化すれば、人格を伴ったキャラクターと捉えられるようになるのは必然です。キャラクターに応じて、僕たちユーザーがどう対応するかも変わってきます。

キャラクター化は日本のお家芸でもあるため、ぜひ何か日本ならではの提案を期待したいものです。

 

職人道具化の方向

一方で、クルマはあくまでも走る道具、というのを突き詰めたものも多く見られました。

マツダの MAZDA VISION COUPE。カッコよすぎる。絶妙なボディバランス。

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Mercedes Benz の Mercedes-AMG Project ONE。F1に匹敵するスペックを持つとのこと。

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日産の IMx。良い写真が撮れなかったので公式サイトから画像を拝借。自動運転もできるが操る喜びの方も大事にするコンセプト。

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引用:日産:第45回 東京モーターショー 2017

このような、よりドライビングを愉しむ存在としての職人道具化は、クルマの正統進化系かと思います。個人的な興味はキャラクター化の方ですが、正統進化も見ていて楽しいですね。

今後もこの「キャラクター化/専門道具化」の二極化のトレンドは続くんじゃないかなと思います。

 

2. クルマを取り巻く環境・ライフスタイル提案の増加

最近の東京ビッグサイトで開催されているモーターショーは、展示ブースが大きく西棟と東棟に分かれています。西棟の1階と東棟の1階が、各社自慢の車を展示するメイン展示場です。

一方西棟の4階にも展示があり、今年は “TOKYO CONNECTED LAB 2017” と銘打たれたブースが立ち並んでいました。個人的に、毎回この西棟4階の展示のほうが好きだったりします。

この4階の展示から、面白いライフスタイルの提案があったのでいくつかご紹介します。

トヨタ

トヨタはConnectedの技術で、タクシーのドライブレコーダーにリアルタイムでアクセスするデモを展示していました。(なぜか写真が消えてしまったので写真はなしで…)顔やナンバープレートはリアルタイムでぼかしが入り、プライバシーに配慮されています。この映像はいろんなことに活用が期待できそう。

あとはカーシェアの端末を使って、スマホを鍵にしてシェアしたり、トランクを宅配ボックスとして使う提案がありました。端末は発売済みとのこと。

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ホンダ

ホンダの本ブースは見そびれてしまいましたが、ここはしっかりと見ました。

家の部屋がそのままクルマになる提案。

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実は2年前の記事のおわりに以下のように書いたのですが、

(前略)今回のモーターショーを観て改めて感じたは、まだまだ「乗る」という一時的UXにフォーカスしすぎているのでは?ということです。

今回この記事で紹介した展示は全展示のほんの一部であり、ほとんどの企業はモノと技術の展示に終始していました。

今後電気自動車が一般化して給電のあり方含めて家の一部となった場合など、考えるべきエクスペリエンスはまだまだたくさんあるはずです。ガラケーがiPhoneに淘汰されたように、最先端の技術を持つ日本のクルマもAppleやGoogleのクルマに淘汰されるかも、という一抹の不安を覚えました。

予言的中と言うかきちんとモーターショーでもこういった実際の生活とモビリティのつながりを提案してくれたのがホンダでした。

こちらは部屋側から見たところ。

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あとはこのお姉さんが乗っているチェアモビの、

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二人乗り版のコンセプトが良かったです。スケッチがすごいインパクト。

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日産

日産は1Fでも展示のあった、IMxの Intelligent Mobility のムービーを流していました。

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Youtubeで見つけたので貼っておきます。

 
最近は日本の車メーカーからとにかく「コネクティッド」という言葉を多く聞くようになりました。2年前よりはこれらのようなライフスタイルに関連した展示も増え、ようやく乗車前後の体験にも光が当たるようになったのかなー、と少しだけほっとしました。

 

3. フィンテック企業の出展により融ける壁

最後に、フィンテック企業が出展していて、話を聞くとすごく良いサービスで驚いたので書き残しておきます。

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こちらの会社は Global Mobility Service という会社で、与信審査に通過しない人々にも車両を利用できる仕組みを提供しています。

どういうことかというと、エンジンに直結したIoTデバイスを組み込んだ車を、BOP (Base of the pyramid) と呼ばれる貧困層の人たちに与信審査なしで車両提供します。ユーザーはもしローンが支払えなかった場合、IoTデバイスによってエンジンが起動しなくなり、車が使えなくなって生活に困ることになります。

つまり、車のエンジンという心臓を引き換えに、審査なしでローンを組めるという仕組みです。

これはなるほどなーと思いました。今まで車が買えなかった層が車を持てるようになり、仕事に車が必須なユーザーは、がんばって働いてローンを返すよう努力します。車メーカーはより販売数が増え、お金を貸す企業はより間口を広げることができます。

Win-Winが成り立っており、うまいビジネスモデルだと思いました。

なお、こちらの企業はモーターショーで開催された「THE MEET UP ピッチコンテスト」で優勝したそうです。

参考:自動車業界の概念を覆すプロダクト・サービスを決定する、東京モーターショー THE MEET UPピッチコンテストにて、グローバルモビリティサービスが優勝|Global Mobility Service株式会社のプレスリリース

 
このようなフィンテック企業がモーターショーに出展し、しかもコンテストで優勝したという事実を知り、業界間の壁がいい具合に融けているなぁと感慨深く思います。

 

おわりに

以上、東京モーターショー2017で気になったポイントをUX視点で3つご紹介しました。

今年は2年前と比べて、日本の車メーカー及び周辺業界の未来に少し希望が見える展示でした。

 

 
…以下余談。

実はモーターショー帰宅後発熱していたことがわかり、そのまま5日間ダウンしてしまい秋のデザインイベントに何も行けませんでした。2年後はそうならないよう、健康管理に気をつけていきます。。

Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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