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HCD-Netフォーラム2014 参加メモ 〜デザイン思考/UXD/おもてなし〜

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デザイン思考とHCD

こんにちは、@h0saです。

2014年5月23日に開催された、HCD-Netフォーラム2014の一日目に参加しました。

基調講演:「デザイン思考とHCD」
基調パネルディスカッション1:「これからのHCD/UXD」
基調パネルディスカッション2:「おもてなし-2020年のUXを考える」

という内容。個人的には、企業内にどうデザイン思考やHCDの視点を普及させるか、という課題に対してのヒントを得るために聴きに行きました。

以下、気になったところのメモです。

 

基調講演:「デザイン思考とHCD」 紺野登氏

基調講演は多摩大学大学院経営情報学科教授、Japan Innovation Network代表理事の紺野登氏。著書の『知識デザイン企業』や『ビジネスのためのデザイン思考』を数年前に読んでいたので、同氏の講演は一度聴いてみたいと思っていました。

半分くらいしか理解できませんでしたが、「デザイン思考の問題点」あたりの話は面白かったです。

[2014年6月11日追記]
ビズジェネというサイトで、本講演内容がまとめられていました。理解度が3割増になりました!

参考:モノのデザインからコトのデザインへ-HCDを軸に人間の営みからデザイン思考を考える(1/4):企業のIT・経営・ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine (EZ)

Human-centered Innovation

“Human-centered Innovation” という言葉が印象的でした。

・GoogleのNest買収、「メガ・シティ」構想など、21世紀は人間を取り巻く環境が大変化

・こうした大きな転換期がビジネスをドライブする
 →ビジネスの価値の源泉が変わってくる

モノからコトへ、ではなくコトの中にモノ(技術)を埋め込むこと

例)カイザーパーマネンテ(会員制の保険団体、カリフォルニア州を中心に9つの地区を対象にした医療サービスを展開)のイノベーションセンターでデザイン思考のアプローチ導入した。

医者が手術中に患者の様態が急変し、患者の情報にアクセスしなければならないという状況で、どうアクセスするか。静脈認証、指紋認証、虹彩認証、顔認証、という技術がある中で、一番技術レベルの低く認証精度も低い顔認証技術を採用した。人がある極限状況で本当に必要なモノ(技術)は何か?という視点で、精度が低くても最もスムーズに認証を行える技術を採用した。

・Human-centered Innovation の時代に望ましい知的方法論への関心のなかで、デザイン思考(Design Thinking)が活用され始めている

 

Design Thinking

続いてデザイン思考について。

・背景
 - 問題解決から問題発見・定義へ
 - 論理的分析思考から直感創造的思考へ
 - 人間社会の方法論(質的研究方法論:エスノグラフィーなど)
 - オープン・イノベーション
 - 創造的思考、ビジュアル思考、「場」の技術、ファシリテーション

・IDEO ← IDEO-U ← Interaction Design (by Bill Moggridge)

・デザインは知識のための言語。暗黙知の視角化、知識資産の想像、活性化に有効。

・日本の神社の「お清め」:日本では「清める」という不可視の知恵、文化的知識を伝えるためにデザインが活用されている (by Bill Moggridge)

・人間を社会、技術(モノ)、ビジネスとの関係性で理解する必要がある
 →人間の場を知る、エスノグラフィが出てくる

 

デザイン思考の問題点

・観察、アイデア、プロトタイピング、ストーリーテリング・・・というワークショップをよくやっているが、これがデザイン思考か?本当にこれでイノベーションを起こせるのか?

→知識創造プロセスモデルが必要

知識創造プロセスモデル

・問題はプロトタイピングのところ。デザインのプロでない人がエスノグラフィーを教えてプロトタイピングできるのか?

・デザイン思考は新たな「モノづくりの知」という誤解

・何のためのイノベーションかを忘れて、デザイン思考のプロセスだけを追っていてもイノベーションは起きない

→デザイン思考でカバーしきれていないファクター:目的(あるいは大きな願望)

・アラン・ケイの見解(トボス会議のインタビューより):デザイナーがデザイン思考を教えていない。フレキシビリティがない。もっと柔軟性を持たせる必要がある。

・IDEOの方法論からはiPodは出てきていない。もう少し広くデザイン思考を捉えよう。

 

人間の営みとしてのデザイン思考

・目的工学:目的を共に作り実現する組織の方法論
 →目的の軸を用いてデザイン思考を考えるべき

目的に基づくデザイン思考の実践

・デザイン思考の次に来るもの:人々(ユーザー)がデザインする

例)Techshop
FabLabに近い。SquareはTechShopから出てきたイノベーション。
→大事なのはコミュニティ。Techoshopはサンフランシスコにあり、IDEOの人や学生などが集めって、いろいろなアイデアを交換する。デザイン思考を市民がやる。

・Society 3.0

社会Society3 0

→コトの時代では供給者と需要者の関係は曖昧、相互置換

例)Appの売り手は買い手でもある。Facebookではコンテンツを一般人が給料をもらわず発信している。

・次のデザイン思考の対象:どうビジネスをつくるか
→ビジネスモデルキャンバスなどを利用

ビジネスのためのデザイン思考の3つの側面

・21世紀のデザイン:知識のプラットフォーム(人間社会の共有知)へ。
→価値創造につながる。

価値生産プロセスとしてのデザイン

 

基調パネルディスカッション1:「これからのHCD/UXD」

登壇者:
渡邊 康太郎氏 (takram design engineeringディレクター)
外山 雅暁氏 (特許庁総務部国際協力課意匠政策班班長課長補佐)
松原 幸行氏 (HCD-Net理事・キヤノン研究員)
安藤 昌也氏 (HCD-Net理事・千葉工業大学准教授)

パネルディスカッションの前に、登壇者の方々の自己紹介を兼ねて、それぞれ実績や関わられてきたプロジェクトの紹介がありました。

元経産省デザイン政策室に在籍されていた外山氏のお話は、デザイン業界に身を置く私としても興味深かったので、メモを載せます。

特許庁 外山雅暁氏のお話

デザイン政策3つの柱:経営、教育、国際化

デザイン政策3つの柱

・デザイン思考活用促進検討委員会を結成し、ワークショップを開催した。IDEO、takramと一緒に。

 

企業にデザイン思考を取り入れる上での課題

①デザイン思考の取り組みの共感者をいかに増やすか

・トッブダウン型アプローチ:経営層に対するデザイン思考の理解促進
 →経営層に経産省からデザイン思考の大切さを教えようとしている

・ボトムアップ型アプローチ:デザイン思考を体感するWS開催やイントラネットでの情報共有

デザイン思考の導入 課題①

②実際の投資になる案件をいかに増やすか

・『10 types of innovation』の図

デザイン思考の導入 課題②

→製品デザインだけでなく「組織デザイン」「経験デザイン」が重要

・オムロンの例:計測器だけでなく、計測した情報を医者に渡すという仕組み(サービス)までを提供

所感:
省庁の中にこれだけデザイン思考を理解されている方がいることを知り、少しほっとしました。デザイン政策ハンドブック2014のpdf版が近々オンラインで読めるようになるそうなので、早く読んでみたいです。

 

パネルディスカッション:「これからのHCD/UXD」

Q. 経営者のHCD/UXDに対する反応は?(松原氏)
経営者の視点で話をしないとなかなか通用しない(戸山氏)
→会議の名前を変えるだけでもいい。「価値実現会議」とか(安藤氏)
成功事例を見せて、「この結果にはこのプロセスがあった」という言い方をしている。プロセス自体を追求しても意味がない。デザイン思考を通して何を実行していくかを伝えていく。(渡邉氏)

Q. 経産省に来るエグゼクティブはもともとデザイン思考に興味がある。興味のない人にどうアプローチする?(渡邉氏)
→まず、気付き始めている人に話しかけていく。そういう人たちが集まる場に話をしに行く。(戸山氏)

Q. takramでメソッドがいっぱい生まれる理由は?(戸山氏)
→毎回、前回のメソッドを使ってみる。しかし組織ごとに最適なメソッドは違う。チューニングを毎回行うことで、新しいメソッドが生まれていく。(渡邉氏)
→千葉工大のユーザー工学という授業では、手法の歴史を教えている。コンテクスチュアル・インクワイアリーは北欧の労働組合から云々。ペルソナの歴史。手法ではないんだ、ということがわかる。手法は必要に応じて考えられてきた。(安藤氏)
→『経営戦略全史』という本はフレームワークの生まれた背景が書かれている。安藤先生の話と一致する。(渡邉氏)

私見:手法の歴史や背景を学ぶのは、なるほどなぁ、と思いました。手法が生まれた背景を学べば、手法自体に囚われることなく、組み合わせたり少し変えたりと状況に応じた使い方ができそうです。今後、意識してみようと思います。

Q. takramの一員として、これからどういう人になっていく?
越境力。(渡邉氏)
→学生だと「越えてもいいんだよ」というと越える。(安藤氏)
→takramは新しい仕事をする体制をすることで越境する、学生は越境する環境を整える。場をつくることが大事。(戸山氏)
→ワークショップのアイスブレイクも1つの足枷をとること。ブレストワークショップで一番大切なのはアイデアの量(統計学的に出ている)。それを出すにはバカになること。コラボレーションのデザインが大事。(渡邉氏)

私見:個人的にも「越境力」は意識しており、この話にはとても共感しました。

Q. マインドは?
→守破離。(渡邉氏)
→組織のマインドと個人のマインド。会社で飲み会行ってる?サービスデザインとかそういうところから話がでるのでは。(安藤氏)
→省庁では飲み会は全く行っていない。(戸山氏)

Q. どういうところに多様性が重要で、どうおさえていくべきか?(林千晶氏)
→省庁は縦割りでそれが多様性を阻害している。前の部署はクールジャパンの部署と同じ。そこでいろいろなことやった。そういうのを増やしてくべき(戸山氏)
→変わり続けることを変えない。ディレクター3人、最低限な品質が担保されればこれからは40人でもよい。(渡邉氏)
→生徒個人個人がまず多様。安藤研鬼10則がある。リードする人がビジョンをつくる必要がある。(安藤氏)
→多様な人を集める。正しい多様性を持つためには、自由に意見を言える場をつくる。(松原氏)

 

基調パネルディスカッション2:「おもてなし – 2020年のUXを考える」

登壇者:
林 千晶氏 (ロフトワーク代表)
丸山 幸伸氏 (日立製作所 デザイン本部 主管デザイナー)
長谷川 敦士氏 (HCD-Net理事・コンセント代表)
山崎 和彦氏 (HCD-Net理事・千葉工業大学教授)

趣旨:東京オリンピックが開催される2020年にどういったユーザー体験が実現しているか?
(Podcastで「おもてなしUX2020」というのを山崎先生と長谷川氏でやろうとしている)

以下私見:
2020年のオリンピック開催地として東京が選ばれる前、「”おもてなし”とUXデザインは異なる」といった論調の記事をよく見かけた気がしますが、”おもてなし”という言葉がこれだけフィーチャーされた今、UX界隈の方々はこのテーマについてどう思っているのでしょうか。

個人的には、言葉の定義について細かく議論するのは生産的でない気がします。

今回のパネルディスカッションでも、「おもてなし」という言葉に引っ張られて、本質である”ユーザー体験”の話がほとんど聞けませんでした。

それよりも、登壇者の方々の自己紹介を兼ねたお話の方が興味深かったので、そちらの方のメモを詳しく載せます。

 

ロフトワーク 林千晶氏のお話

林氏のプロフィール/プロジェクト紹介

・ロフトワークの創業 2000年 中国の深センにて
・e-bayに感動 人と人をつなぐ

・石垣島のUSIO DESIGN PROJECT
・みんさ織りのプロジェクト
 →みんさ織りのタッチポイントを増やすためにマスキングテープを使った

pass the button × loftwork
 →例えばJINSメガネの廃材 どう新たな価値を生むか

KOIL オープン・イノベーション 場を作る、環境自体が人をクリエイティブにすると信じている
 →研究機関が最も多いのはつくば。そこと人との接点をつくるために柏の葉に作った。

・FabCafeを渋谷につくった。バルセロナに新しくつくる。
・3年前、田中浩也氏と合宿した 3Dプリンタというよりもレーザープリンタに魅力を感じた
・まず知りたい、触ってみたい、という人も入れるように、デジタルファブリケーションを身近に感じられるように、FabCafeをつくった
・はじめから海外を目指していた。2軒めは海外につくろう、と。

・メディアラボの所長補佐
・Joiの家に泊まったとき、シャカというデトロイト出身の元犯罪者に出会った。どこまで多様性を受け入れるかに今興味がある。

※シャカの話はこの本に詳しく書いてあります。

・越境がコンセプト Anti-Disciplinary

 

2つの面白い研究

①複雑経済性とGDPの関係 多様性の測り方

・日本人は謙遜して多様性がないと言いがちだが、経済的視点で見たら多様な知識・知恵・領域が個別にある。日本人は非常に多様性を持っている

経済複雑性

多様性

②科学的に分析する

・『職場の人間科学』創造性が生まれる場所、などをRFID使って解析 非常に面白い本

 

日立製作所 丸山幸伸氏のお話

日立の丸山氏のお話も、メーカー勤務の身として興味深かったので、メモ。

丸山氏のプロフィール

・はじめはオーディオ機器のデザインを担当
・昔からメソッドをつくってきた
・ビデオカメラの時はユースケースベース、新しいことを考えるには新しい方法が必要、というスタンスでやってきた

 

ビジョンデザイン

・海外のヘルスケアサービスをやるには?未知、未経験なエリアをどうデザインするか

ビジョンデザイン

未来を考えるときに2つやること

①2025年に何をやるかを考える:「きざし」化

参考:25のきざし:日立のデザイン

②そのプロトタイプを共有する →ビジョンデザイン方法論

→きざしからプロトタイプした未来はオンラインで公開されています。

ビジョンをプロトタイプした結果、イギリスでの仕事が取れたとのことです。

 

25のきざしから1つ:Hospitality Crysis

きざし Hospitality Crisis

・モンスターXXXがもっと出現
・2020年はおもてなしがコモディティ化
・2025年は「サービスの限界」を迎えぬようビジネスモデル、および生活者の意識変革が求められる

 

パネルディスカッション

前述した通り、あまり生産的な内容ではありませんでしたが、気になったところだけメモしました。

・デザインはトップダウン、おもてなしはボトムアップ?

林氏:「なす」というのは日本ならではの価値観。豊かな自然、八百万の神。アラブでは砂漠で靴脱げたら取れないから一神教へ

丸山氏:「おもてなし」という言葉は好きじゃない。はじめから相手がそれを期待している前提。デザイナーの思考停止を招く

林氏:日本人は高めることに長けている。「道」にしてしまう。埋立地ではバーチャルなおもてなししちゃえばいい。それを極める。

渡邉氏:究極のサービスデザインは茶道なのでは?型を守ることでのすばらしい体験がある。

 

所感

デザイン思考やHCDの視点を経営戦略に取り入れていくことは今の日本企業が閉塞感を打破する上で必須であり、今回のフォーラムではそのためのいくつかのヒントを聞くことができました。

・モノからコトへ、ではなくコトの中にモノ(技術)を埋め込む

・「目的」を見失わない

・ボトムアップ型アプローチの場合、成功事例を見せて「この結果にはこのプロセスがあった」とう説明をする

・「越境力」が大事

・日本人は非常に多様性を持っている。自信を持つ!

・ビジョンをプロトタイピングする

今回聴いた内容を実践に生かしていきたいです。

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  • Hiroki Hosaka

    メーカー→ベンチャー勤務のUXデザイナー。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。さらに詳しいプロフィールはこちら

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