デザインメソッドを俯瞰して探すのに便利な『リサーチデザイン、新・100の法則』
こんにちは、@h0saです。
世の中にはいわゆる「デザインメソッド」と呼ばれる手法が数多く存在しています。
今回はそんなデザインメソッドを俯瞰しながら検索するのにとても便利な『Research & Design Method Index – リサーチデザイン、新・100の法則』という本をご紹介します。UXデザイナー、UXデザインを学習中の皆様にお薦めします。
僕はデザインメソッドを学んだら、このブログにアウトプットしながら脳内の引き出しに格納するようにしていますが、この本をパラパラめくるとその引き出しがガタガタと音を立てて活性化します。
KJ法といった有名なメソッドから、プロトコル分析(思考発話法)やステークホルダー・マップまで、HCDやUXD、サービスデザイン、デザイン思考といった領域を学ぶと出てくる各種メソッドが網羅されています。まさにデザインツールボックスといった感じ。
それでは以下、この本の魅力について詳しく説明していきます。
Contents
リサーチデザイン、新・100の法則 3つの魅力
1. 100の手法を「使うフェーズ」や「特徴」といった切り口で俯瞰できる
この本の優れているところは、各手法がどのデザインフェーズで有効なのか、そしてどんな特徴を持っているのかが一目でわかるという点です。
デザインフェーズは下記5段階に分類され、各メソッドごとにタグ付けられています。
5つのデザインフェーズ:
①プランニング、方向性の絞り込み、課題定義のフェーズ
②調査、統合、関係性理解のフェーズ
③コンセプトの創造、プロトタイプの生成および改良のフェーズ
④評価、修正、生産のフェーズ
⑤発表とモニタリングのフェーズ
また、それぞれの手法の特徴を5つの側面から評価されていて、その手法の概要を把握する上で参考になります。
5つの特徴評価項目:
・行動/意識
・質的/量的
・革新的/応用的/伝統的
・探索段階/創造段階/評価段階
・参加型/観察型/自己申告型/専門的な分析/デザインプロセス
これらの情報が各メソッドごとに記載されており、プロセスを考える際のヒントになります。
2. 原著の評価が高い
この本の原著名は『Universal Methods of Design』です。日本語版では “Research” が題名に入っていますが、この本で紹介しているのは上記1.でもご説明した通り調査フェーズだけでなく、創造や評価フェーズまで含まれます。
Amazonで見ると、日本語版のレビューはほとんどついていませんが、原著では★4.3(2014年6月現在)で好評価であることがわかります。
先日ソシオメディア篠原氏の講演を聴いた際、篠原氏もこの本をお薦めされていました。カーネギーメロン大学のデザインコースでも教科書として採用されているようです。(著者の一人がカーネギーメロン大学の教授でもあります。)
なお、各メソッドは原著ではABCD順で並んでいます。日本語版ではその順番は変わっていませんが、メソッド名は翻訳されているため、ABCD順ではなくなってしまいました。
したがって、目次を見ずにメソッドを検索する場合は、メソッド名を英語で思い浮かべて、その頭文字をヒントにページのアタリをつけると良いでしょう。(Aから始まれば最初の方、Zから始まれば最後の方)
3. 参考文献といった情報ソースも豊富
さらにこの本の良いところは、各メソッドに対して参考文献などの情報ソースが豊富なことです。さらにそのメソッドについて知りたいときに、関連情報にアクセスしやすい配慮がなされています。
例えばこちらはペルソナ手法ですが、この手法が生まれた経緯や参考文献が欄外に載っています。
参考文献は書籍の末尾にまとまっている本が多いですが、この本では各メソッドごとに載っているため、ページをまたいで確認する必要がありません。
手法ピックアップ
ここで、この本に書かれているメソッドを2つピックアップしてみましょう。どんな構成かがわかるかと思います。
メンタルモデルダイアグラム
このブログでも何度か記事にしているメンタルモデルダイアグラムですが、この本にもメソッドの1つとして記載されています。
各メソッドはすべて見開き1ページにまとまられており、左側に説明、右側にビジュアルで説明があります。このレイアウトはすべてのメソッドで共通です。
さらに、左下に評価項目、右側にフェーズの表記があり、パラパラめくってもメソッドの概要を把握できる仕組みです。
ビジネスオリガミ
日立製作所のデザイン本部から生まれた “Business Origami(ビジネスオリガミ)” もメソッドの1つとして紹介されています。
日本の企業から生まれたメソッドが「100の法則」の1つとして数えられているのはすばらしいことです。
はじめに原著を読んだ時に「おっ!」と感動したので、ここで取り上げさせていただきました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
あるプロジェクトで進め方を考えるときに、「何かよい手法はないかな〜」という感じでこの本をパラパラめくると、ヒントが得られるかと思います。
税抜き価格 4000円 と結構値が張りますが、1冊持っていると何かと役立つ本です。
個人的なこの本との出会いは、僕が1年前ロンドンにいた頃に本屋で原著を偶然見つけた時でした。立ち読みして勉強になりそうだったので、思い切って購入。帰国後に日本語訳版が出版されることを知り、そちらも追加で購入しました。そんな経緯もあり、個人的に思い入れのある本となっています。
最後に、この本の「はじめに」の最後に書いてある文章を引用して、この記事の終わりとします。
本書で紹介する100のメソッドとテクニックは、それを実行することが目的ではなく、より良いデザインに到達するための一つのステップと捉えてほしい。成功のための評価基準や解決すべき問題に照らして効果を検証し、テストを繰り返し、優先順位を付け、うまく組み合わせながら活用しよう。デザイン手法は、対話の一形態だ。それを忘れずに。