「ペルソナ手法」の復習に!ペルソナについてのあれこれをQ&A形式でまとめてみる【2017年更新版】
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こんにちは、@h0saです。最近業務でペルソナを作っていて、ペルソナ手法について自分の知識を見直しています。
今回は「ペルソナ」について聞かれた時に説明しやすいように、「ペルソナ手法」についてのあれこれをQ&A形式でまとめてみました。
なお、このまとめはペルソナのマーケティングでの活用ではなくプロダクト開発での活用を前提に書かれています。
更新履歴
2014年8月16日:「ペルソナをつくったあとにやることは?」と「捏造ペルソナ」について追記しました。
2017年7月29日:最新の経験と知識を元に、内容を加筆修正しました。
Contents
ペルソナとは何か?
ペルソナとは、ユーザーの行動パターンを調べ、そのデータを統合して作り上げたユーザーを代表する仮想の人物のことです。一体のペルソナの背後には、多くの人間が存在します。
1999年にAlan Cooper氏が『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』という本の中で紹介した後、Microsoft ユーザーリサーチマネージャーだったJohn Pruitt氏が『ペルソナ戦略』が刊行したのをきっかけに、Web開発だけでなくマーケティング手法としてとても活用されるようになりました。
参考:「ペルソナ」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!- SMMLab(ソーシャルメディアマーケティングラボ)
そのペルソナを活用したデザインアプローチが「ペルソナ手法」です。(正しくは、Alan Cooper氏が2007年に刊行した著書『About Face 3 インタラクションデザインの極意』の中で紹介されている「ゴールダイレクテッドデザイン」の一部。)
ペルソナを作るメリットとは?
ペルソナを作ることで得られるメリットを2つ挙げます。
参考:コンテンツ企画の前に!Web担当者のためのペルソナデザインマニュアル
1. 意思決定にブレがなくなる
これがペルソナを作成する最大のメリットです。
プロダクトやサービスを開発する際、多くのプロジェクトではマーケター、エンジニア、デザイナーなど複数の人と関わりながら進めることになるかと思います。
その際、それぞれのメンバーがそれぞれの経験からイメージした「ユーザー」で議論を進めると、多くの場合話がまとまらずに有効な意思決定ができません。
一方、具体的な人物像まで描かれた「ペルソナ」が決まっていれば、同じ人物像をイメージしながら議論ができるため、意思決定にブレがなくなります。判断に迷ったら、ペルソナに聞けば良いわけです。
2. ユーザーを深く理解することでユーザー目線になれる
ペルソナを作るにはまずターゲットとなるユーザーについて調査します。観察やインタビューを繰り返すことで、ユーザーへの理解が深まります。
その結果、ユーザーが抱える課題やニーズを鮮明にイメージできるようになり、「このペルソナだったらどんなことをするだろうか」といったようにユーザー目線でものごとを考え、発想しやすくなります。
ペルソナを作るデメリットはある?
では、ペルソナを作ってデメリットはあるのでしょうか。
『UXデザインの教科書』には、以下のように記されています。
一方弱みは、デザインの目標がペルソナに含まれているユーザーのゴールを満たすことにあるため、ペルソナの良し悪しがすべてを左右してしまう点である。ペルソナが強力なツールであるだけに、ペルソナをうまく作ることができていないと、その後のデザインの妥当性が低下してしまうかもしれないからである。
つまり、ペルソナの作成に失敗すると、デザインの狙いが外れてしまうということです。
これに加えて、ペルソナ作成は後述するようにきちんとした調査が必要で時間がかかるため、昨今のリーンやアジャイルと言ったスピード感が求められる開発現場では、導入が難しいことが往々にしてあります。
このような背景から、後述する「プロトペルソナ」が好まれるようになってきています。
ペルソナの作り方は?
ペルソナ作成は基本的に以下のステップで進めていきます。
参考:顧客視点を高めるペルソナ・マーケティングとは? | カイロスのマーケティングブログ
1. ターゲット層を定める
まずは提供するサービスやプロダクトのターゲット層を絞り込みます。マーケティング調査の定量的なセグメント分けを利用しても構いません。
ここで選んだターゲット層のユーザーがペルソナの人物像の基盤となります。
2. ターゲットユーザーを調査する
次に、ターゲットとなるユーザーの調査を行います。調査手法には、「コンテクスチュアル・インクワイアリー」や「ユーザーインタビュー」、「観察調査」などがあります。
コンテクスチュアル・インクワイアリーは、現地に出向いてユーザーの「観察」と「インタビュー」を行う調査手法です。ユーザーの実態とニーズを明らかにするためには、この手法が最も適しているとされています。(『UXデザイン入門』より)
参考:コンテクスチュアル・インクワイアリーのコツとツボを学ぶ ー 樽本徹也氏のインタビュー入門より | UX INSPIRATION!
もちろん、現場に出向いてあれこれ聞くことが難しい場合もあるかと思います。その場合は、別会場でインタビューしたり、会話はせずにとにかくユーザーの後ろについて観察する(=シャドーイング)など、なるべく生の情報を得るようにします。
ここで得られた質的データがペルソナを形づくる材料になります。
3. 行動パターンをまとめる
ユーザー調査によって得られた質的情報から、行動変数を抽出します。
「行動変数」とは、ユーザーの利用状況、態度、意識、行動傾向、知識など、ユーザーごとに変化する特徴のことです。
各人の調査データからユーザーの特徴を表すものをキーワードとして付箋に書き出し、関連するものをグルーピングしていく方法(KJ法)がよく用いられるでしょう。
行動変数を抽出できたら、行動パターンをまとめていきます。その際、下図のようなマッピングを行うとわかりやすいです。
(『UXデザイン入門』p.65 より引用)
上図では、行動変数の軸上にユーザーをマッピングしていてます。こうして行動の似ているユーザーを視覚化し、行動パターンを明らかにします。パターンの数が生み出すべきペルソナの数となります。
4. ペルソナシートに落とし込む
そして、「ペルソナシート」に落とし込んでいきます。目標は、プロジェクトメンバーに「共感」を持ってもらうこと。そのために、実在する人物のようにディテールを作り込んでいきます。
顔写真、名前、年齢、職業などの基本的な情報から、最終的なゴールやテクノロジーに対するリテラシー、フラストレーションに思っていることなど、開発に役立つ情報を記述します。
ペルソナシート、Persona Sheet で画像検索すると、いろいろとまとめ方の例が出てきます。
ポイントなのは、必要以上に情報を増やさないことです。プロダクト開発に関係のない情報まで含めてしまうと、ペルソナの焦点がぼやけてしまいます。あくまで、ペルソナの行動や価値観に紐づく情報を載せるようにしましょう。
5. ペルソナに優先順位をつける
最後に、ペルソナの優先順位をつけます。
すべてのペルソナの要求を満たそうとすると、誰も満足できない製品やサービスができてしまいます。それを避けるために、優先順位1位を「プライマリーペルソナ(または主役ペルソナ)」、2位以下を「セカンダリーペルソナ(または脇役ペルソナ)」として順位を定義します。
そして、「プライマリーペルソナ」の要求を完全に満たすことを目的にプロジェクトを進めます。
「セカンダリーペルソナ」の要求は、「プライマリーペルソナ」の意向によって採否を判断します。
例えば、ある機能をセカンダリーペルソナが要求しているけれど、プライマリーペルソナにとって不要な要求の場合は、却下します。これがもしプライマリーペルソナにとって「どちらでも構わない」要求の場合には、採用します。
プライマリーペルソナの要求を再優先にしつつ、セカンダリーペルソナの要求にも応えることで、エッジが効きつつ間口の広いサービスやプロダクトを構築することができます。
ペルソナを作った後にやることは?
参考:実践ワークショップ Vol.6 シナリオ作成|ペルソナ・ラボ
ペルソナ手法はシナリオ手法と組み合わせて「ペルソナ/シナリオ法」とも呼ばれます。その名の通り、ペルソナを作った後にやるべきことは、シナリオの作成です。
ペルソナのゴール・期待を考えた上で、そのニーズを満たす理想のサービスとはどういうものかを、シナリオを使って具現化します。いつ、どこで、どのようにサービスとのインタラクションがあるのかを、時系列順に描いていきます。
カスタマージャーニーマップのようにまず体験の全体像を描くこともあれば、ストーリーボードのように具体的なシナリオをイラストや図を交えてわかりやすく視覚化することもあります。
このシナリオを作成する過程で、ユーザーの要求を明確化します。そしてその要求を満たす機能・コンテンツについて検討します。
この後、ワイヤーフレーム作成、プロトタイプ作成へと進みます。実際に触ってみると「この機能は不要では」などと色々と改善点が見つかるので、可能な限り早くプロトタイプを作ることをオススメします。
参考:ZIBA濱口秀司氏が提唱する「3種類のプロトタイプ」の考え方が参考になった【追記あり】 | UX INSPIRATION!
ペルソナとターゲットユーザーの違いは?
プロダクト開発におけるターゲットユーザーは、プロジェクト開始時に設定されるマーケティング調査のセグメンテーションをベースに、価値観や趣向といった情報を加えることが多いです。しかしながら、ペルソナほど具体的な記述はありません。
参考:UXデザインで考える「ターゲットユーザー」 – Tigerspike Tokyo – Medium
一方、ペルソナはターゲットユーザーの調査から得られたデータを統合して作り上げられた仮想人物であり、具体的な1人の人物として表現されます。
プロトペルソナとは?
プロトペルソナは、Lean UXで提唱されている「ペルソナの原型」です。
※Lean UXについての関連記事:『Lean UX ー リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン』刊行記念セミナーレポート at GREE | UX INSPIRATION!
上記までの従来の「ペルソナ手法」は、ペルソナを構築するために多くの時間と費用が掛かります。
「プロトペルソナ」は、”製品を使うのは誰か” “その理由は何か”について、推測によってまとめられます。記述も形式張らないスケッチで。
引用:Using Proto-Personas for Executive Alignment | UX Magazine
現場でリサーチを行って修正を行いながら、ペルソナの精度を上げていきます。「まず作ってみる」というLean UXの根本的な考え方に則っており、今後はこの「プロトペルソナ」の方が主流になっていくんじゃないか、と個人的に思っていたりします。
なお、プロトペルソナは他にも「プログマティックペルソナ」や「なんちゃってペルソナ」「捏造ペルソナ」「簡易ペルソナ」とも呼ぶようです。
ここも追記
前者2つについては、以下の記事が参考になります。
なんちゃってペルソナがやって来た!〜リーン/アジャイルなペルソナ論〜 | slideshare
「捏造ペルソナ」については、コンセントの長谷川さんがワークショップの中で使われていました。以下が参考記事です。
サービスデザイン方法論2014 第2回:カスタマージャーニーマップ レポート | UX INSPIRATION!
おわりに
これまでペルソナ手法について(2014年の時点で)なんとなくしか理解していなかったので、今回徹底的に調査してみました。その内容をまとめながら書いたのがこの記事です。
アウトプットしながらインプットしたことで、かなり記憶に定着しました。
参考文献が多岐にわたりましたので、以下に列挙させていただきます。
参考文献