イノベーションとサービスデザインの話を早稲田大学に聴きに行った
こんにちは、@h0saです。先日、早稲田大学に行ってきました。
「第2回イノベーション創出のエコシステム勉強会 社会システムとサービスのデザイン 〜教育/研究/事業の観点から〜」
という講演を聴きに行くためです。
登壇者は、慶應の前野隆司教授と竹山政直教授、千葉工大の山崎和彦教授。
イノベーションやサービスデザインに関する話を聞くことができました。どうして早稲田大学でこのような勉強会をやっているかというと、以下のような背景があるからのようです。(研究会のWebサイトより引用。)
“イノベーション、サービス、マネジメント、デザイン教育を提供している大学は、今までの経営学科中心から、慶応義塾大学 SDM、東京大学 i.school、千葉工業大学 デザイン科学科、京都大学 デザインスクール、早稲田大学 プロフェッショナルズワークショップ、金融サービスイノベーションコースなど分野融合29大学、32コースと広がってきました。また、企業においても、大阪ガス 行動観察研究所、富士通 フィールド・イノベーション、大日本印刷 サービスデザインラボ、ソーシャルイノベーション研究所など人を中心にしたイノベーションの創出や、日立 社会イノベーション事業、デザイン本部、東芝 スマートコミュニティセンター、IBM Smarter Planetなど新しいシステムの創造活動が行われています。
イノベーション創出のエコシステム 第2回勉強会では、イノベーションを起こす上で重要な活動であるデザインに注目し、教育/研究/事業などの観点からざっくばらんに議論します。 “
イノベーションやデザイン教育を行っている団体はこんなに増えてきているんですね! 早稲田もデザイン教育やイノベーション教育に対して焦り始めている印象を受けました。
以下、勉強会メモです。
Contents
慶應SDM 前野隆司 教授 <システム思考とデザイン思考>
SDM = システムデザイン・マネジメント研究科
・システム思考とデザイン思考を重視
・文理融合型社会人向け大学院 (起業率No.1)
・メーカーだけでなく、政府機関からも学生が来ている
日本の課題
・あらゆるものがつながる現代の中、俯瞰的に全体を捉えて問題を解決しなければならない。誰もそれをできていない。
↓
・解決するには?
「問題をシステムとして俯瞰的に捉え全体として整合性のある解をイノベーティブにリ・デザインする方法」を確立し、これを身につけた人材の育成を行うべき。
協創 (Co-creation)
・多様なチームの成果がイノベーションを生む
・日本ではその仕組ができていないのがもったいない。
・女性の数とイノベーション率正の相関あり
・システム思考 × デザイン思考 = イノベーション
・デザイン思考:IDEO やスタンフォード大学が先行
– Observation エスノグラフィックな質的アプローチを重視
– Ideation 集合知に基づく協働を重視
– Prototyping for Empathy 共感のためのプロトタイプ
[2014/04/20 追記]
前野氏が編著者の『システム×デザイン思考で世界を変える – 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』という本が3月12日に発売されました。上記メモの内容を含め、システム×デザイン思考について詳しく書かれています。
千葉工大 山崎和彦 教授 <イノベーションのためのデザイン教育と事例>
デザイン教育をする立場に至った経緯
・IBM アメリカのデザイナーはかなり勉強していた。MBAの講習を受けたりとか。
・40歳過ぎてから勉強始めた。神戸芸術工科大学 とか博士課程満期終了とか
・7年前のUXカンファレンスでショックを受けた。皆ペルソナ手法を知っていたが、日本ではつゆ知らず。アメリカではデザイン手法が一般的となっていた。
・日本へデザイン手法の啓蒙活動を行っている。書籍や様々な活動を通して。
・日本は改善ずるデザインは強いが、提案型のデザインが弱い。『エクスペリエンス・ビジョン』の考え方が必要。
UX 3つの視点
ヒトの視点、モノの視点、ビジネスの視点
– ヒトの視点
ユーザー、ステークホルダーがどのようなコンテクストがあったらよいか?
– ものの視点
人間に関わる人工物が、どのようなかたち、構造であったらよいか?
– ビジネスの視点
ビジネスモデル・仕組みを考える
→ソーシャルセンタードデザイン(SCN)へのアプローチ模索中
デザインイノベーションのための教育
・体験ワークショップ
サービスデザインに対してはイベント型のプロトタイプを行う
★日本人は手法を学ぶのが大好き。しかし、手法を “つくる” ほうがもっと大事。自分たちの現場でどう適用するか、考えることが大切。
・IDEOのすごいところは、プロジェクトごとに手法を考えること。本に書かれているのは、それらの一例に過ぎないので注意。
→「やり方をデザインする」。これが本当のデザイン思考なのでは。
・社会人へのデザイン教育にも力を入れている。Open CU やミームデザイン学校。
慶應経済学部 竹山政直 教授 <サービスデザインとイノベーション>
(経歴:経済学部出身 都市空間、情報技術、モバイル、マーケティング・・・からサービスデザインに辿り着く)
サービスデザインについて
・サービスデザインはデザインとビジネスのどちらもカバー
・サービスデザインの背景: 体験価値・ユビキタス・所有から使用へ
・PhillipsやGEはすでにサービスデザインを取り入れている
→従来の縦割り組織から、顧客価値の観点から捉え直してフラットな組織に
サービスデザインの特徴
1. 顧客の価値創出への参加と支援
2. ものヒト場所を横断するシステム
3. 資源ネットワーク(ステークホルダー)の再編による事業革新
サービスデザイン分野の動き
・マネジメント/マーケティング
↓
・インタラクションデザイン HCD
・プロダクトデザイン
・ソーシャルデザイン
↓
・サービスデザイン
・SDN Service Design Network 2004- 発足 →1/3 企業、1/3 アカデミック
・SDN Japan 2013 6月に発足 発起人に
・メソッドにとらわれ過ぎるとイノベーションの妨げとなる。プロジェクトごとにメソッドを作り上げるべき(山崎先生の意見に同意)
・Open Experience Journey Design: サービスデザインにユーザーの意見を取り入れる
→Open IDEO のサービスデザイン版
研究事例
・Curimo トヨタとパーソナルモビリティの研究
→Webサイト、企業サイト、App, Twitterアカウント をビジュアル化。ストーリーテリングの一種
→これをユーザーに見てもらって、参加してもらうことを検討中
質疑応答
Q. 政府もこのような活動に取り込むべきでは?
A. 前野氏 研究室でやっている
A. 竹山氏 イギリスは政府機関がサービスデザインを取り入れている。日本もどんどんやっていくべき。
A. 山崎氏 アメリカでは選挙のUXを考えたり。日本の経産相と一緒に、デザイン思考促進委員会というプロジェクトをやっているが、運営の仕組みが古い。議事録配布したりとか。AXISでやることにした。日本政府でデザインを取り入れるには、仕組み・意識から変えていかなければならない。
Q. 解は見つかるが、実行が難しい。どうすれば?
A. 前野氏 システム横断
A. 竹山氏 デザイナーがファシリテートすべき
Q. 関係者のモチベーション、目標の調整は?
Q. 横河電機の新規事業 どうしていくべきか?
A. 山崎氏 中堅のマネージャー層は自分の体験で成功しているので変えにくい。変えるためには、その人自身が新しい手法での成功体験をしないと変わらない。
所感
サービスデザインについて最新の事例を聞くことができ、参考になりました。私も自社にどう取り入れていこうかと模索中です。。引き続き、サービスデザインには注目していきます。このブログでもどんどん記事にしていきたいです。
photo credit: ElectronicFrontierFoundation via photopin cc