イノベーションを考えるために明日からできる3つのこと ー 濱口秀司氏の講演動画を見て

(2014/05/06 更新) イノベーション |

こんにちは、@h0saです。

かねてから見たいと思っていた、Ziba濱口秀司氏の下記の動画を見ました。

 
内容を要約するとズバリ、「日本人によるイノベーションの起こし方」です。

濱口氏はアメリカのデザインコンサルティングファームZibaで戦略ディレクターとして活躍されていますが、この動画では「イノベーション力において日本人最強説」を唱えられています。

イノベーションの起こし方については海外の方法論が輸入されることがほとんどですが、濱口氏の日本人発の方法論は貴重であり、馴染みやすいです。

1時間20分と一見長く感じられますが、図解が豊富ですっと理解しやすく、集中してあっという間に見終わります。「イノベーションを起こしたい」と考えている人は必見の動画です。

本記事のタイトルにある「イノベーションを考えるために明日からできる3つのこと」とは、

1. 脳を”Structured Chaos”状態に保つ
2. 切り口を見つける
3. バイアスを視覚化する

です。以下、上記の内容含めて重要なポイントをまとめました。

 

イノベーションとは

濱口氏は、イノベーションについてははっきりした定義ができないと言います。学者の数だけイノベーションの定義があるとのことです。

(以前聴いた東大i.schoolエグゼクティブフェロー田村大氏の講演では、田村氏はイノベーションを「人間の行動・習慣・価値観に不可逆の変化をもたらすアイデアの普及」と表現されていました。)

ただし、これを満たせばイノベーションである、という3つの要件があるそうです。以下がその要件です。

・見たこと、聞いたことがない
・実行可能である
・議論を生む(反対/賛成)

見たこと・聞いたことがないことをどう生み出し、議論を生む原因の不確実性にどう対処するか、が重要とのことです。

 

イノベーションを考えるために行う3つのこと

濱口氏が提唱するイノベーションの起こし方、それは「バイアスを崩す」ことです。イノベーションの要件の1つである「見たこと、聞いたことがない」に通じます。

そのためには、以下の3つのことを行う必要があります。

1. 脳を「構造的混沌(Structured Chaos)」”状態に保つ

人がクリエイティブな状態になっている時は、脳が「構造的」と「混沌的」の間にある、「構造的混沌(Structured Chaos)」状態になっているとのこと。

その状態を保つには、ダイアグラムやポンチ絵を使って考えることが大事だそうです。

Structured chaos

 

2. 切り口を見つける

例えばブレストをして面白いアイデアに投票したとします。濱口氏いわく、そこで「なぜ面白いと思ったか」を考えることが大事とのこと。一本軸を引いて、「ここに位置するから面白い」と考えるようにします。これが「切り口」を見つけること。

アメリカ人はブレストをしたらすぐに投票して面白いアイデア1つに決めがちですが、日本人はその背後にある切り口を見つけるのが得意だそうです。このことが濱口氏が「日本人最強説」を唱える所以でもあります。

Axis

 

3. バイアスを視覚化する

見つけた切り口を組み合わせて、バイアスを視覚化します。見える形にすることで初めて、壊す対象になります。

Bias

 
そして最後に、視覚化したバイアスを破壊します。こうしてイノベーションが生まれます。

上記の1〜3は、明日からすぐに取り組めます。ただし、壊すべき深いバイアスを見つけるには、トレーニングが必要です。毎日何かを考える際、1〜3をを意識して行うことでイノベーティブなアイデアを生む練習になります。

 

日本人の課題

日本人はものごとの背後にある何かを捉えて切り口を見つけることは得意なのですが、日本人が起こすイノベーションには2つの課題があります。これらを克服する必要があります。

フレームワークが小さい

日本人はフレームワークを小さく考える傾向があるとのことです。フレームワークは以下の3つの要素で構成されます。

・目的
・範囲
・切り口

この3つの触る(目的の一歩か二歩上を目指し、広めのスコープ(範囲)を探り、バイアスを可視化する際の切り口を探す)ことで、フレームワークを高い所に持って行く。そしてバイアスを壊すことで大きなイノベーションを起こせるとのことです。

 

不確実性へのマネジメントが苦手

もう1つの課題は、不確実性(uncertainty)のマネジメントが苦手なことです。

マネジメント層は構造的思考、クリエイティブな人は混沌的思考の人が多いですが、このままでは話が噛み合いません。マネジメント層が混沌的思考を受け入れる素地が必要とのことです。

日本のマネジメント層には、数字では測れないものをマネジメントできるようなることが求められます。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。世界のクリエイティブシーンに濱口氏のような方が活躍されているのは、日本人としてとても誇りに思い、また勇気づけられます。いつか、直接お会いしてみたいものです。

「イノベーションを考えるためにできる3つのこと」を日々意識していきたいです。(ためしに記事の挿絵を手描きで描いてみました。)

なお、この動画は2012年8月の講演のものです。最新の講演では内容がアップデートされているかと思われます。しかし、この動画で話された内容は濱口氏の思考論の最も基本的かつコア部分であるはずです。

その他、以下のリンクを読むと最新の内容を補足できるかと思います。併せてご覧ください。

ZIBA濱口秀司氏が提唱する「3種類のプロトタイプ」の考え方が参考になった | UX INSPIRATION!

i.schoolのFuture of Japan InnovationにZibaの濱口さんの話を聞きに行って来ました | dotgraphy.com

ビジネスデザイナーZIBA濱口秀司さん のシンプルな図解とフレームワーク – NAVER まとめ

コーナー:デザイン思考とイノベーション:企業のIT・経営・ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine (EZ)

Hiroki Hosaka

AIベンチャーのUXデザイナー/デザインマネージャー/CXO。メーカー→IoTベンチャー→外資系デザインコンサルを経て現職。このブログではデザインやUXに関するクリエイティブネタを発信しています。
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