「ワークショップの実践」情報デザインフォーラム第15回 参加レポート
こんにちは、@h0saです。
2014年9月20日に開催された、第15回情報デザインフォーラム「ワークショップの実践」に参加してきました。
今回は書籍『情報デザインのワークショップ』発行記念ということで、ワークショップに関連した講演と、その名の通りワークショップが2つ行われましたので、以下にレポートします。
Contents
講演:「放課後モノづくりとワークショップ」
初めは品モノラボの発起人である田中章愛氏の講演でした。
田中氏はロボット・メカエンジニアで、本業として新規事業開発に携わりつつ、放課後(=本業外)にものづくり活動を行い、最近までアメリカに一年間留学されていたそうです。
VITROというデザインユニットにて8pino(USBにつながる正解最小Arduino ¥800-)を制作するなど、趣味を超えた放課後活動に積極的に取り組まれています。
そのような放課後活動している人にたくさん会うようになり、「品モノラボ」を立ち上げるに至ったそうです。
品モノラボとは
放課後、会社帰りに品川に縁のある「メーカーの人々」や「メイカーな人々」が気軽に集まり、飲み物片手に一緒にものづくりについて語り合ったり、学んだり、実際に作ったりする”サークル活動”的meetupです。
「品モノラボ = 品川ものづくりラボ = 品川のモノづくりコミュニティ」とのこと。
国内/国外の Maker Faire に出展するなど、ワークショップだけに留まらない活動をされています。
「モノづくりバンド」をつくるのが裏テーマで、音楽バンドのデビュープロセスを意識しているのだそうです。同じ興味を持つ人が集まることでバンドができる。イイですね。
本業へのフィードバック
放課後活動の本業へのフィードバックについても説明されていました。
まず、会社(SONY)へゲリラ展示を行ったとのこと。課外活動の成果発表を受け入れてくれる土壌があるのは素晴らしいですね。
そういった活動の流れで、SONYの中で “SAP Creative Lounge” というメイカースペースを作るに至ったそうです。下記記事が参考になります。
参考:Make: Japan | “放課後” の研究開発を促進する企業内メイカースペース「SAP Creative Lounge」─ソニー株式会社 田中章愛さんインタビュー(前編)
まとめ
・オープンイノベーションと共創は気軽な共同作業から
・コミュニティ構築は ゆるく アツく
コミュニティを作る際に大事にしていることは、「内輪感を出さないこと」「誰でもオープンにすること」なのだそうです。
同じ興味を持つ人が集まることで、内なる意欲をもとに、イノベーションが生み出す。とても参考になる取り組みでした。
ワークショップの体験
続いて、2つのワークショップを体験しました。
カーテン・ディスカッション
1つ目は、『情報デザインのワークショップ』p.34-35に書かれている、「カーテン・ディスカッション」というワークショップです。
当日はこのWSの「目的」が共有されず、ただのトライアルになってしまった感があるので、改めて本WSの「目的」を記しておきます。
・・・グループ内でカーテン・ディスカッションを行い、自分のコンセプトやアイデアをとことんさらけ出す。すぐにグループの力に頼るのではなく、まず自分ならではの考えを出し切ることで、価値あるさりげない気づきがグループでの議論の陰に隠れてしまうことを避けるのが目的である。
引用:『情報デザインのワークショップ』p.34
「インフォグラフィクスを作成して何かを伝える」という前提で、インフォグラフィクスのプロトタイプをブラッシュアップするためのWSのようです。
今回は「自分が何者であるか」をテーマに行われました。
手順
1. 3人一組のチームになる。
2. 「自分が何者であるか」を図解する(15分)。
3. 他の2人にプロトタイプを見せる(30秒)。この際、会話をしてはいけない。
4. 他の2人にコンセプトを説明する(1分)。聞く側は発言をしてはいけない。
5. 聞く側2人が、発表者がいない前提でディスカッションを行う(1分)。発表者は架空のカーテン越しに、聞き耳を立てる。
6. 最後は全員で共有(2分)。
印象としては、5のカーテン越しに聞き耳を立てるのがポイントで、ここでの聞き手の会話(辛口であればあるほど良い)がブラッシュアップのヒントに繋がるのではないかと感じました。
サービスデザインワークショップ
2つ目は、同じく『情報デザインのワークショップ』のp.53に書かれている、「サービスデザインの視点を把握するワークショップ」です。
※山崎先生の講演資料より引用
「飲食店におけるサービスデザイン」をテーマに、まずは「うれしかった体験」と「残念だった体験」を自分の記憶を辿って書き出します。(それぞれ10個ずつ書くのが目標。)
次に、これらの体験を、「ヒト」「モノ」「ビジネス」の視点と「利用前」「利用中」「利用後」の視点を並べたマトリクスに振り分けます。
ここで気付くのが、「利用中(お店の中)」での体験が多いということ。その前後も意識して、さらに記憶を遡って書き出します。その内容を、先ほどの3人チームで共有しました。
「期待とのギャップ」に着目する
ここでポイントとなるのが、「期待とのギャップ」に着目することです。期待の大きさによって、ある体験をしたときの感情の大きさも変わってくるからです。
安藤先生によると、「顧客の事前期待を把握・分類整理することが、サービスデザインの最初で行うべきこと」とのことでした。
事前期待は以下の5つに分類されるそうです。
①共通的な事前期待(清潔な環境であってほしい)
②個別的な事前期待(自分の好みに合わせてほしい)
③動的な事前期待(今日の会合はビジネスなので放っておいてほしい)
④潜在的な事前期待(飲み屋で仕事のヒントをもらえた)
⑤間違った事前期待(先入観で誤解していた)
そこで、3人で共有した体験の中から「最もギャップが大きなうれしい体験/残念な体験」を選びました。
僕らのチームでは、「韓国人が経営する焼肉屋で会計を終えたら、リセッシュを直接服に吹きかけられた」という常葉大学の女子学生の体験を選びました。
上記5つの事前期待のどれに当たるかは微妙なところですが、予想外だったけど臭いに気を遣ってくれて嬉しかった、という①と④が織り交ざった期待だったのでしょうか。
満足度の高いサービスデザインをするには「期待」を把握しておくことが重要というのは新しい視点でした。
また、添付のようなワークシートを用いるのは、「サービスデザイン」という概念を知らない人に対してサービスデザインの視点を知ってもらうのに有効だと感じました。
リアルタイムドキュメンテーション
今回の情報デザインフォーラムでは、PCを利用したリアルタイムドキュメンテーションが行われていました。
手描きでのリアルタイムドキュメンテーションは見たことがありましたが、PCツールを用いるのは初めて見ました。
こちらにそのリアルタイムドキュメンテーションがアップされています。きれいにわかりやすくまとまっていてすごいです。
このPCを用いたリアルタイムドキュメンテーションは、東海大学の富田誠先生のチームが取り組まれていました。以下、富田先生のブログです。
参考:情報デザインフォーラム「ワークショップの実践」にてリアルタイムドキュメンテーションをしてきました。 | 富田 誠
おわりに
以上、第15回情報デザインフォーラム「ワークショップの実践」の内容をレポートとして振り返ってみました。
「品モノラボ」という取り組みを知ることができたこと、サービスデザインでは「期待」の把握が重要であることを再認識したこと、が個人的には2つの大きな収穫でした。
参考記事
第15回情報デザインフォーラム 2014年9月 | 情報デザイン研究室
第15回情報デザインフォーラム「ワークショップの実践」 – KK U-Blog